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正しい姿勢を身に付けることがパフォーマンスの向上につながる/清水エスパルスが取り組む体幹トレーニング

サッカーの技術、戦術を実行するために土台となるのがフィジカルだ。なかでも、動きづくりの基礎段階である育成年代の選手にとっては、ボールスキルや戦術の習得と並んで、重要なものとなっている。

COACH UNITED ACADEMYでは、清水エスパルス アスリート育成コンディショニングコーチの齋藤佳久氏に登壇して頂き、近年、力をつけてきている同アカデミーで実施している「エスパルス・アスリート育成プロジェクト」の内容を紹介してもらった。清水エスパルスのアカデミーは選手たちの動きづくりについて、どのような認識のもと、向上に取り組んでいるのだろうか?(文・鈴木智之)

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育成年代から自分の身体の性質を理解することが大切

2016年の4月にスタートした同プロジェクトは、アカデミーの選手に運動能力の低下が見られることから、始まったという。

「アカデミーの選手に運動能力の低下が見られ、学校で行っている新体力テストの結果を見ても、全国平均よりも下回っている現状がありました。サッカー選手以前のレベルにあると感じたので、サッカー選手になる前に『アスリート』を育成しようという取り組みを開始しました」

清水エスパルスのアカデミーで定義する『アスリート』とは、運動に見合った身体の可動域や筋力、コーディネーション能力を備え、自分の体がどう動いているのか、なぜこの動きやプレーができたのか、できなかったのかという自分との対話ができるパーソナリティを持った選手を指している。その上でサッカースキルや身体的、精神的な面も備えた選手が『アスレティックサッカープレイヤー』となり、プロにつながる可能性が高いと考えられている。

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アスリート育成プロジェクトは、三つの柱に分かれている。一つ目が姿勢と動き作り。二つ目がコンディショニング、三つ目が食育だ。COACH UNITED ACADEMYでは、一つ目の「姿勢と動きづくり」について説明してもらった。齋藤氏によると「姿勢、動き作り」には以下の項目があるという。

・基本姿勢習得
・基本動作習得
・基本から応用運動能力向上(走り方、ターン、方向転換、ステップなど)
・サッカー動作 (キック、コントロールなど)
・個別動作改善(パーソナルトレーニングなど)

「人間の運動制御は、可動性(柔軟性)、安定性、安定した中での動作性、スキルの4つがあります。可動性(柔軟性)を例にキック動作を説明すると、ボールを蹴る際に、足を後ろに大きく振り上げるための柔軟性、腕を振る可動性が必要です。これらがない状態で運動すると、パフォーマンスに影響が出てしまいます」

エスパルスでは年に2回、個別評価で立位体前屈、フルスクワット、結帯結髪、股関節などを点数で評価し、選手にフィードバックしている。

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「立位体前屈は、指の先が床につくか。フルスクワットは両足のかかとを床まで全部つけた状態で、下までしゃがむことができるか。最近の選手は、後ろに倒れるケースが多いですね。ひざとつま先が正面を向いた状態で、かかとをつけてしゃがむことができるかをチェックします。できるできないだけの評価だけでなく、どの様に行っているのかのチェックも同時に行います」

サッカーの動作に必要な身体の安定性を高めるための体幹トレーニング

これ以外にも、2項目ある。

「結帯結髪とは、背中の上と下から手を出してつかめるか。背中、肩甲骨周りの硬さを確認する動作のことで、左右両方で行います。それ以外には股関節の可動域も見ます。相撲の四股の動作で、どれだけ股関節を開いてお尻を落とせるか。どれだけ股関節を後ろに引けるかを見ます」

サッカーの動作(ボールを止める、蹴る、運ぶなど)を正確に行うためには、身体の安定性が重要になる。ボールを蹴る動作は片足立ちになるので、バランスを取らなければ、足をイメージ通りに振ることができなくなり、ボールへのインパクトが不確実になる。結果、キックミスに繋がる。

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「キック動作以外にも、走ることや相手と接触する、身体をぶつけるときにも安定性が必要です。安定した動作を行うためのトレーニングとして、みなさんの頭に思い浮かぶのが、体幹トレーニングだと思います。エスパルスではジュニアからやっています」

エスパルスでは年齢に応じて、次のテーマのもとに体幹トレーニングを行っている。「良い姿勢の保持(ジュニアからU13)」「重心移動(U14)」「サッカー動作(U15~)」。COACH UNITED ACADEMY動画では、フロント(上肢、下肢)、キック動作など、動きのベース作りから、サッカーの動きに近いものへと移行していく様子を紹介しているので、ぜひ確認してほしい。

齋藤氏は「ただ体幹トレーニングのやり方を教えてやらせるのではなく、身体のどの部位、筋肉を鍛えるのか。なぜそこを鍛えることが必要なのかを説明し、理解した上で実施するようにしています」と語る。

「体幹トレーニングで何を鍛えているのか。それは身体を安定させるための筋肉。いわゆるインナーマッスル(腹横筋、多裂筋、骨盤底筋、横隔膜など)と呼ばれるものです。選手たちには『姿勢を保持する筋肉を鍛えるんだよ』と説明しています」

スポーツ動作だけでなく、日常動作のもととなるのが姿勢だ。座る姿勢を例にしても、背中を丸めて背もたれにより掛かる、いわゆる「猫背」が通常の姿勢になっている人も少なくない。

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「なぜ猫背になるかというと、その姿勢が楽だからです。楽な姿勢イコール『姿勢保持筋』を使っていない証拠です。選手たちには『姿勢保持筋を補強するために、体幹トレーニングを行うんだよ』と説明します。日常から姿勢が悪い中で、練習時にだけトレーニングをして効果があるのでしょうか? 下手にトレーニングをすることで腰を痛めるなど、怪我に繋がる可能性があります。日常的に良い姿勢をしている人が、補強として行うのが体幹トレーニングで、普段からちゃんと姿勢保持筋を使っていることが前提なんです」

後編では、良い姿勢は具体的にどのようなものなのか、どこを目安にすればいいのか。さらには、姿勢や動きを改善するための、体幹トレーニングの詳細について紹介したい。

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【講師】齋藤 佳久/
理学療法士(PT)、国際PNF協会認定PNFセラピスト、スポーツ栄養スペシャリスト。PTとして10年以上スポーツを専門とするリハビリとサッカーのトレーナー活動に携わる。現在、エスパルス育成部PTとしてメディカル部門を担当する一方、アスリート育成コンディショニングコーチとして、身体作りやパフォーマンス向上、食育に対しての取り組みも行う。姿勢・動作分析から選手を客観的に評価し、必要に応じてパーソナルトレーニングも実施している。