07.01.2019
認知能力を高めるために必要なルール設定とコーチング/東急Sレイエス流プレーモデルの作り方と実践方法
COACH UNITED ACADEMYでは、街クラブながらゼロからプレーモデルを作成し、チーム全体で運用&実践に挑戦している東急Sレイエスの阪本洋平氏の取り組みを公開中。
前編では主に、プレーモデル作成のきっかけ、作る上で注力したポイント、プレーモデル資料の公開などを中心に、レイエスが大切にしている認知能力についての解説とそれらの内容をトレーニングメニューへ落とし込む方法などをセミナー形式で紹介してもらった。
後編ではそのプレーモデルにしたがって重要視している認知能力のトレーニングの目的やコーチングポイントなどを解説。その後、解説したトレーニングを実践した。なおトレーニングはウォームアップから、鳥かご、ミニゲームなど、認知能力を高める練習を計5種類行っている。(文:内藤秀明)
認知能力を高める一つのトレーニング「4対2」
その中のうちの一つが、3つのゾーンに区切った4対2だ。タッチ数は3タッチ以下で行う。位置的優位の創出と活用が目標のトレーニングになる。
ルールは以下の通り。
・攻撃側は常に3ゾーンを占有すること(誰かが各ゾーンにいること)
・守備側は、外側のゾーンには一人しか行くことができない
・タッチ数は3タッチ以下(技術レベルに応じてフリータッチでもOK)
また、この練習のポイントは
・二人目のDFと駆け引きできるポジションをとること
・ボールだけを見て寄らない
・プレーの連続性
・攻撃方向の意識
の4つだという。
具体的に阪本氏はこう語る。
「これは攻撃方向も意識させながらプレーさせます。ボールの状況によっては、攻撃側は自分のゾーンから出てサポートする必要があります。ただ真ん中のスペースを誰かがあければ、他の誰が埋めないといけません。そのため『自分はどのタイミングでならボールに寄って良いのかなど』などをを認知させながらプレーさせます。何もコーチングしないでプレーさせると、全員がボールに寄ってしまい、3人が同じゾーンにといるという状況が起こりえます。常にボールを持っていない味方を認識しながら行動するトレーニングになります」
実際の練習におけるコーチングポイント
実際にトレーニングを開始すると、デモンストレーションの段階で、つい味方の選手を確認せずに、「攻撃側は常に3ゾーンを占有すること」というルールを破ってしまう事象が発生する。それに対して阪本氏は
・ボールの位置
・味方選手の位置
の両方を認識するようにコーチングを行った。
その後も、開始の1~2分の間は、「攻撃側は常に3ゾーンを占有すること」「守備側は、外側のゾーンには一人しか行くことができない」の二つのルールを守れない時間が続いたが、徐々に子供たちもルールへの適応を見せ始める。
なお、守備と攻撃の切り替えは、外側のラインから出ない限り終わらない。攻撃側のパスミスの場合、出し手と受け手が守備にまわる。また守備側がパスをカットした場合、ドリブルでボールを外に運んだ場合のみ攻守交替になる。その際、攻撃側で守備に交代するのは、ボールを失った選手ではなく、ドリブルで突破された際に脇にいた攻撃の選手二人だ。このルールを適用することで、ボールを奪われたと認知した瞬間に、すぐに守備を意識させるトレーニングにも繋がる。
その後、ある程度ボールが回り始めると、常に二人目のDFを意識した上でボールを運ぶようコーチングする。ボールホルダーの近くにいる攻撃側の選手に対して
「ボールホルダーの近くにいるDFから、プレッシャーを受けないポジショニングはどこ?」
とボールを受ける前のポジションについて阪本氏は指導する。続けて
「ボールを受けた時点で、ボールホルダーの近くのDFを突破している状態にして、もう一人のDFと勝負を仕掛けられるようにすること」
と、複数のDFを認知した上でボールを引き出すポジショニングをコーチングした。
このトレーニング以外、ウォーミングアップでも、ゲーム形式でも、いずれにしても認知能力を高めるメニューになっていた。阪本氏がどのタイミングで、どのようなコーチングを行っているかを含めて、COACH UNITED ACADEMY動画をぜひ参考にして頂ければと思う。
【講師】阪本洋平/
東急SレイエスFCチームダイレクター・U-18監督。川崎フロンターレのユース出身で、大学卒業後の2005年からレイエスでコーチとして携わる。2011年~2016年は代表業務も兼任したが、2017年には一度退職し中国1部リーグの河北華夏幸福足球倶楽部でアカデミーの立ち上げ業務を経験した、2018年にレイエスに復帰し、2019年より現職に就任した。
取材・文 内藤秀明