07.14.2019
パスを向上させる基礎的なポゼッションゲーム/認知を高める指導方法「エコノメソッド」
パリ・サンジェルマンやアルビレックス新潟、興國高校サッカー部なども導入している「エコノメソッド」は、サッカーサービス社やスペインの経験豊富な指導者、そして大学の教授たちによって独自に開発された指導メソッドです。今回、COACHUNITEDでは、「エコノメソッド」のトレーニングメニューを4つのテーマに沿って紹介していきます。
(※この記事はサカイクから再編集し転載したものです)
2回目 「スペースの認知」を学ぶトレーニング>>
3回目「サポートの意識」を高めるトレーニング>>
4回目「スペインでジュニア年代から徹底される方向付けのトラップ>>
エコノメソッドのトレーニング内容とは?
エコノメソッドは、試合とほぼ同じ状況を再現することによって、サッカーで大切な認知を高めるトレーニングができる方法です。エコノメソッドで行われるトレーニングには、すべて自分・相手・味方・スペースという概念があります。
そして、いつ・どのタイミングで・何を観て・どこへ動き・どんなプレーをするかという、認知に必要な要素が含まれています。すべてがサッカーの状況に落とし込まれた練習メニューなので、実際の試合で起きる現象が次々に出てきます。実戦に近いため、気を抜くことなく、集中した状態で強度の高いトレーニングが繰り広げられるのです。
「ここで紹介するのは、我々が大切だと考えているサッカーのコンセプトです。ただし、これが唯一無二の正解というわけではありません。あくまでも、我々が信じているコンセプトです。まずはそれを頭に入れてもらい、話を始めたいと思います」(サッカーサービス指導者)
テーマ1 『パスのレベルアップ』
練習メニュー:(3+3+1フリーマン)vs3
【進め方】
長方形のグリッドの中に攻撃側のフリーマン1人と守備側3人が入り、ライン際の長い辺に2人、短い辺に1人を配置。7対3でポゼッションゲームを行います。ボールを奪われた選手のチームが守備側になるか、時間で攻撃側と守備側を分け、コーチの合図で攻守が交替します。ライン際の選手(△と●)は、ラインと並行にしか動くことができません。
【トレーニングのポイント】
<1.パスの出し手>
●強くパスを出す
パスが弱いと、相手選手に寄せる時間を与えてしまいます。
●足元にパスを出すのか、スペースに出すのかを考える
相手選手が近くにいる場合は足元へ。相手選手が近くにいない場合はスペースへ出して、味方選手のスピードを落とさないようにします。
<2.パスの受け手>
●ボールを受ける前に、スペースや相手、味方の位置を見る
ボールが動いている間に、周りを見るのは難しい。ボールが来る前は時間に余裕があるので、周囲の状況を把握しやすくなります。
●味方がボールを持ったら、パスコースを作る
相手選手の後ろに隠れてしまうと、パスを受けることができません。相手の前か2人の相手の間に入り、パスコースを作ります。
●次のプレーに移りやすい身体の向きを作る
ピッチの広い範囲を見て、よりよいパスコースを探すためにも、身体の向きを作ることは大切です。また、ボールが来た方とは遠い足でコントロールすることにより、スムーズにプレーすることができます。
【解説】
この練習のテーマは「周囲の状況をしっかりと見て、適切な判断をし、ボールを失わないようにパスをつなぐこと」です。
トレーニングはフリータッチでおこないます。フリーマンはグリッドの中央からあまり動かず、周りがサポートに入り、短いパスを連続してつなぐことを意識します。7対3と攻撃側が数的優位なので、パスコースは3つ以上作るように動くことが望ましいです。攻撃側の選手は常にステップを踏み、足を地面にべたりとつけることのないように。ボールを受ける動きを絶えず行い、パスを受ける準備をし続けます。
今回は複数のポイントを設定しましたが、通常のトレーニングにおいて、指導ポイントは1つ程度にします。なぜなら、選手に多くを要求すると、プレーする上で意識すべき点があいまいになってしまうからです。通常はトレーニングのテーマとして設けた点のみに対してコーチングを行い、選手の意識がその日の課題へ向くようにします。
【コーチングの例】
攻撃側の選手がパスをミスしたり、相手に詰められたら「どこを見ていた?」「どこが一番いいパスコースだった?」「ボールが来る前に顔を上げて、周りを見よう」「相手の後ろに隠れない。パスコースを作ろう」
【アドバイス】
これは大きなスペースでも、狭いスペースでもできる練習です。選手のレベルが上がれば、グリッドを狭くして、プレッシャーを強めましょう。長いパスの向上を目的とするのであれば、ピッチを広くするといいでしょう。
これはパスだけの練習に見えますが、視点を変えれば、攻守の切り替えなど様々な要素をレベルアップすることができます。大切なのは、選手にプレーについて考えさせることです。世界トップクラスのクラブでは、この練習を一番下のカテゴリーからトップチームまで、ピッチを広くしたり、狭くしたり。7人、9人、11人、など人数を変えて、レベルに応じて行なっています。
次回は、「スペースの認知」を学ぶトレーニングについて紹介します。
2回目 「スペースの認知」を学ぶトレーニング>>
3回目「サポートの意識」を高めるトレーニング>>
4回目「スペインでジュニア年代から徹底される方向付けのトラップ>>