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「叩けよさらば開かれん」/新しい時代に求められる賢い選手を育てる方法とは?

いま世界は、先の見えない時代に突入している。混沌とした時代を生き抜いていくために、サッカー指導者が子どもたちに伝えられることはなんだろう? COACH UNITED ACADEMYでは、ドイツ、イギリスで指導経験を持ち、帰国後はJクラブと街クラブで指導を続ける、伊勢原FCフォレストの一場哲宏監督に出演してもらった。(文・鈴木智之)

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黙っていては誰も助けてくれない

テーマは「オンザピッチ、オフザピッチの両方で賢い選手を育てる方法」。前編は「人間力を養う」と題し、伊勢原FCフォレストが主催し、子どもたちが大会運営から審判まで、すべてを行う『フォレストカップサッカー大会』の取り組みや、保護者との関係性について話をしてもらった。サッカーを通じて、これからの時代を生き抜く力を付けさせたいと考える指導者、保護者にとって必見の内容だ。

神奈川県伊勢原市で活動する、伊勢原FCフォレスト。代表を務める一場哲宏監督は日体大を経て、ドイツのケルン体育大学に留学。ケルンの街クラブやイギリスのクラブでコーチを経験した後、湘南ベルマーレ、FCしらゆりシーガルスを経て、2019年に立ち上げた伊勢原FCフォレストの代表を務めている。一場監督の指導の原体験は、ドイツでの日々だ。

「日本では黙っていたり、行動をしていない人がいると『どうしたの?大丈夫?』と周りが声をかけてくれます。でもドイツでは、黙っていると、『あなたは黙っている人なのね。わかった。そっとしておいてあげる』という扱いをされます。聖書には積極的な行動をとれば、おのずと道が開けるという意味で『叩けよさらば開かれん』という言葉がありますが、ドイツで暮らしたことで、自分から動いて、主張し、道を切り開いていくことが大切なんだと、身を持って体験しました」

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自分で考えて行動できる「人間力」が必要

ドイツの教育や価値観を知った一場監督は、日本の環境を振り返ったときに、危機感を覚えたという。受け身の子、指示待ちの子が多く、自主的、自発的に行動することを苦手としていたのだ。これは日本の文化、教育によるところが大きいが、これからの社会を生き抜く上ではマイナスになりかねない。

「時代の流れとして、いまの子どもたちが社会に出る頃には、50%の仕事が自動化され、65%が新しい職業につくと言われています。数年前のデータなので、コロナの影響でもっと増えるかもしれません。つまり、いまの子どもたちが社会に出る頃は、いまとはまったく違う社会が形成されているのです。そのときに子どもが指示待ち人間であったり、コミュニケーションがとれない、自分で考えることができない、自己主張ができない状態で、立派な社会人になれると思いますか?」

一場監督の問いかけはもっともだ。サッカーは自分で考えて、決断しなければいけないスポーツだ。自主性、主体性を養う上ではうってつけのサッカーというスポーツを通じて、選手の人間力を高めていくことが、サッカー選手としての成長につながり、社会に出て活躍する上での土台となる。

「私は幼稚園から小学校高学年までを指導していますが、高学年になると自我が確立してくるので、こちらの言葉がすんなり入っていかないことがあります。そう考えると、心が形成されていく過程のジュニアやキッズの年代からアプローチしていくことが大切なのだと考えています」

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子どもに任せることで「自分の指導」に気づける

サッカーを通して人間力を養うために、一場監督は様々な仕掛けをしている。代表的なのが「子どもが主役のサッカー大会 フォレストカップ」だ。

これは伊勢原FCフォレストが主催する大会で、グラウンド作り、本部設営、大会運営、開会式、司会進行、星取表記入、審判、カフェ店員など、すべて子どもたちが行う。

試合に出るメンバーや作戦を決めるのも子どもたちで、コーチはグラウンドの横でコーヒーやお茶を飲みながら見ているだけ。指示出しやコーチングは一切しない。すべてを子どもたちに任せることで、グラウンドで興味深い現象が頻出するという。

「コーチが何も言わないので、普段の指導が子どもたちにどう伝わっているかが、如実に現れます。いつも指導者がコーチングして選手を動かしているチームの子は、ベンチからの指示がないので、どう動いていいかがわからなくなることもあります。そうすると、『自分は試合中、言い過ぎたのではないか』と気がつきます。選手たちがメンバーも作戦も決めてプレーしているのを見ていると、『この子には、こんないい部分があったのか。こんな可能性があったのか』と気がつくことがたくさんあって、おもしろいんですよ」

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子ども同士で互いを高めあえる場作り

ハーフタイムは両チームが一緒になり、合同ミーティングをする。この合同ミーティングでは、相手チームのいいところをお互いに言い合うという。

「サッカーの相手は敵ではなく、お互いに高め合う仲間です。相手がうまくなれば、それを越えるように高め合えばいい。試合をしながら、相手チームがどう戦っているかがわかっている子は、的を得たアドバイスができます。論理的に考えて発表できるイコール、試合中に考えてプレーしているということなので、選手のレベルも上がっていきます」

さらに動画では、「日替わりキャプテン」「ウォーミングアップ、鬼ごっこ」「ケンカゾーン設置」「いいとこメガネ」など、伊勢原FCフォレスト独自の取り組みを紹介している。保護者との関係性づくりについても、一場氏の豊富な経験からアドバイスが送られているので、参考になるだろう。

新型コロナウイルスの影響で活動自粛・縮小が余儀なくされている今だからこそ、改めて指導のベースに目を向ける、いい機会になる動画だ。全容はCOACH UNITED ACADEMYで確認してほしい。

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【講師】一場哲宏/ 伊勢原FCフォレスト代表
日本体育大学に進学後、ドイツ・ケルン体育大学にて交換留学生として4年間サッカーの指導法を学ぶ。ケルンの街クラブで5・6才カテゴリーの監督の他、イギリスや湘南ベルマーレなど国内外で指導に携わる。
2019年4月から一般社団法人伊勢原FCフォレスト代表理事と保育専門学校講師として活動中。独・英・Jクラブで確立したサッカーを通して『人間力』も養う【4ステップ理論】を提供。