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プレーの流れを言語化した4ステップ理論/新しい時代に求められる賢い選手を育てる方法とは?

『サッカー指導者のためのオンラインセミナー「COACH UNITED ACADEMY」』では、伊勢原FCフォレスト代表の一場哲宏監督の講義を公開中。ドイツやイングランドで指導をした後、湘南ベルマーレのアカデミーや街クラブを経て、のべ10万人の子どもたちを指導してきた経験から導き出した、「オンザピッチ・オフザピッチの両方で賢い選手を育てる方法」を教えてもらった。動画後編では、サッカーのべ-スになる「4ステップ理論」を紹介。知覚、予測、判断、実行をどのような考えのもとに、指導していくのか、ぜひ見て学んでほしい。(文・鈴木智之)

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ミスの8割は知覚、予測、判断で起こる

一場監督が提唱する「4ステップ理論」とは、プレーの流れを「知覚、予測、判断、実行」の4つに分け、言語化したものだ。

1つ目の「知覚」は、すべてのプレーのスタートとなる、もっとも大事なこと。見ることから、すべてのプレーはスタートする。

2つ目の「予測」は、選択肢を持つこと。コーチの側からは、選手に対して、多くの選択肢を与えることがポイントだ。たとえば、ドリブル、シュート、パスのいずれかのプレーを選手がしたときに、パスを出せる状態でシュートを打てたのか。それとも、シュートしか考えておらず、シュートを打ったのか。右が見えていて、左にパスを出したのかなど、選手にプレーの選択肢を多く持たせることが大切で、そのもとになるのが予測になる。

3つ目の「判断」は、あらかじめいくつかの選択肢を用意しておき、その中でもっともベストなプレーを選ぶこと。そのときに指導者は、子どもがした決断を認めることが大切だ。「なんでシュートを打つの!?」ではなく、まずはシュートを打った決断を認めることがポイントになる。

そして、4つ目の「実行」は、シュート、パス、ドリブルなどの目に見える成果だ。一場監督は言う。

「サッカーのプレーは知覚、予測、判断、実行の順番で成り立っていますが、保護者の方は、自分のお子さんがシュートを外した、決まった、パスが通った、通らなかったというプレーの実行の部分しか見えていません。それは仕方のないことかもしれませんが、指導者はそこに至る前段階(知覚、予測、判断)はどうだったのかに、目を向けることが大切だと思います。ミスの8割は知覚、予測、判断のミスであるというデータがあります。目に見えないところにどうアプローチするのか? それが指導をする上でのポイントになります」

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質問を通して選手の頭に働きかける

では、どのようにして、知覚、予測、判断の部分を向上させていけばいいのだろうか? 一場監督は「選手への質問」を通じて、働きかけていくという。

1)知覚のミスがあったと思ったら「いま、見えていた?」と質問する

「その際に『見えていたのかよ!』などの聞き方をすると、子どもとの信頼関係に関わるので気をつけてください。イエス、ノーで答えられるクローズドクエスチョンと、『いま何が見えていた?』と聞く、オープンクエスチョンを使い分けましょう」

2)予測=選択肢を持つ部分にミスがあったと思ったら「他の選択肢はあった?」と質問をする

「いま、右にパスをしたけど、左は見えていた?といった聞き方をします。尋問や強制はNGです。コーチの仕事は、子どもがプレーの幅(選択肢)を広げるお手伝いをすることです。ドリブルしか考えていない選手には、パスの選択肢を持たせてあげましょう」

動画では3)判断や、4)実行についても言及し、「子どもの判断を認めること」「止める、蹴る、運ぶだけを切り取って練習するのではなく、ゲーム形式で行う」といったポイントを実際のトレーニング映像をもとに一場監督が解説している。

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最適なトレーニングは4ゴールゲーム

「これらの要素を高めるためにおすすめなのが、4ゴールゲームです。子どもたちだけで楽しく取り組めるので、この練習はよくやっています」

4ゴールゲームは文字通りゴールを4つ設置し、プレーヤーは1対1、2対1、2対2のいずれかで実施。先に2点とった方が勝ちというルールで行う。ゴールが2つあるので、知覚→予測→判断→実行が出やすく、コーチが教えなくても、自然とこれらのプロセスを経てプレーするようになるという。

一場監督は「4ステップ理論はサッカーだけでなく、勉強や生活など、様々な場面に当てはめることができます」と笑顔を見せる。

「国語では文章読解→筆者の心情を予測し、決断して記入します。算数は問題文→公式→決断→記入という流れがあります。スポーツも得意で勉強ができる子は、この流れができているんですよね」

COACH UNITED ACADEMYの動画では、4ステップ理論を実際のトレーニング動画を使い、一場監督がシンクロしながら解説をしている。さらに今回の動画では、低学年の子どもたちでも知覚、予測、判断、実行を実践できる「スモールステップ理論」についても解説。子どもたちのプレーのポイント、指導者はどこを見るのかといったプレーの分析方法を理解することにもつながるので、ぜひ動画を見て参考にしてほしい。

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【講師】一場哲宏/
伊勢原FCフォレスト代表
日本体育大学に進学後、ドイツ・ケルン体育大学にて交換留学生として4年間サッカーの指導法を学ぶ。ケルンの街クラブで5・6才カテゴリーの監督の他、イギリスや湘南ベルマーレなど国内外で指導に携わる。
2019年4月から一般社団法人伊勢原FCフォレスト代表理事と保育専門学校講師として活動中。独・英・Jクラブで確立したサッカーを通して『人間力』も養う【4ステップ理論】を提供。