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「止める」プレーの目的は次の動作に速く移るため。ポイントは重心が上下に動く力とタイミングを合わせる事

COACH UNITEDに出演した動画と記事(『 「止める」「蹴る」を確実にできる選手を育てるには?』)が多くの反響を呼び、それをもとに制作したDVD「トラップ新指導論~サッカーをうまくする「止める」技術の教え方~」を発売した内藤清志氏。

長年、技術と戦術の融合にこだわって指導してきた内藤氏に聞く「止める」の極意。インタビュー2回目は「どのようにしてボールを止めるのか?」という技術面にフォーカスした内容をお届けしたい。

「トラップ新指導論」の
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一般的な足を引くトラップは次のプレー移動に時間がかかる

――内藤さんはDVDの中で"止める"プレーについて「重心上下の動きをイメージし、足元にボールを落とす」と説明していました。一方で、日本の一般的な指導は「ボールの勢いを吸収するように、足を引く」と言っています。上下の動きでボールを止めるトラップは、どのような理論で生み出されたのでしょうか?

内藤:私もそうですが、多くの人がクッションコントロール、いわゆるボールを引くトラップを教わってきたと思います。ですが、ボールを引くという動作は、身体のメカニズム的に、ボールを止めて蹴る、ドリブルで運ぶ動作をするときに、もう一度前に出る動きが必要になります。それだと、一度、足を引いてボールを止めて、次に前に出ていかなければいけないので、プレーのスピードが遅くなります。

――ニュートラルの状態を0だとすると、足を引くことでマイナス1になります。その分、プレーが遅れますし、次のプレーに移るときに力が必要ですね。

内藤:所属している研究室の修士の院生が、「サッカー上級者の方が、足を引いてトラップしていない」と力学的な研究を行いました。向かってくるボールに対して、足を引いて勢いを吸収するのではなく、向かってくるボールに対して力を加えることで、勢いを相殺し、その場にストンと落とすイメージです。その発想をイメージしやすいように「重心を上下させよう」という言葉で指導しています。

――"止める"を指導する上で、意識していることはありますか?

内藤:ボールがピタッと止まるところを、選手自身で見つけてほしいと思っています。よくあるのが、ボールを浮かしたくないからという理由で、ボールの上の方を触りすぎて地面とボールが挟まってしまい、ボールが弾んでしまうこと。その場合は「足のエッジを立てよう」と言います。

そうすると、ボールに当たる足の面積が大きくなるので、反発が強くなり、跳ね返りやすくなるのですが、そこを膝や股関節の角度などを調節することで、自分にとってベストな型を見つけていきます。ボールをピタッと止めるためには、足のどこを使って、ボールのどこを触るといいのかを、繰り返して身につけてほしいと思っています。

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――足のどこにボールを当てると、ピタッと止めやすいのでしょうか?

内藤:これは個人差があります。私自身は、「インサイドの土踏まずの上」です。足裏のアーチにボールをはめるようなイメージで、ボールを触ります。ほかにも、「親指の付け根と地面でボールを挟む」という止め方もあります。これは、親指の付け根付近の関節を使えるので、ボールの勢いを吸収しやすい。土踏まずの上で止めるやり方は、足を幹としてイメージした場合、軸のところなので反発しやすいことが考えられます。

ただ、"止める"の目的は、次のプレーに速く移ることなので、足のどこに当てるのかではなく、自分の中でピタッと止めることができる場所を持っているかどうかだと思います。それはトレーニングをする中で、誰でも見つけることができます。ボールが動かなくなる確率が高い場所があるはずです。

――DVDの中でデモンストレーションをしていますが、やって見せられると、子どもたちもイメージやすいですね。

内藤:子どもは真似したがります。百聞は一見に如かずです。トレーニングでは「足のインサイドのどこに当てているかな? よく見て真似してみよう」と言って、デモンストレーションをします。大人に教える場合は、言葉を交えて理解してもらうと習得が早くなるので、長年のクセとして染み付いている「ボールを引かないこと」と「足首の角度」は言いますね。

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左右両方に行ける位置にボールを置くと、相手DFのプレスが遅くなる

――トラップの成功と失敗は、どこで見分ければいいのでしょうか?

内藤:一番はわかりやすいのは、止めたボールが動いているのか、止まっているのかを見ることです。次に、ボールがピタッと止まるようになれば、体に対してどの位置にボールがあるのかを見ます。この場合の成功は「一番遠くまで蹴られる位置に、ボールを置けているかどうか」です。繰り返しお伝えしている通り、ボールを止めることが目的ではなく、素早く次のプレーに、正確に移ることが"止める"の目的です。遠くへ、素早く蹴られるところにボールを置くことができれば、時間のロスはありません。素早く、良いプレーをすることができます。

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――止めるプレーが上手な選手は、誰が思い浮かびますか?

内藤:イニエスタ選手でしょう。彼はJリーグの選手というより世界的に見ても稀だと思います。もちろん、Jリーガーはみんな上手だと思いますが、日本人選手では川崎フロンターレの大島僚太選手、中村憲剛選手のイメージが強いです。その点、グアルディオラ監督時代のバルセロナの選手は、足元にピタッと止める技術が上手いと感じました。

つまり、チームとしてそういう部分が目立つ戦い方をしているという部分が大きいと思います。テクニカルなイメージのないプジョル選手ですら、上手に止めます。メッシ、シャビ、イニエスタの3人は異次元ですね(笑)。最近、当時の映像を見たのですが、シャビはボールを止めて、蹴る、という技術に長けていたパサーだという印象を持っていましたが、実際はそこからドリブルで持ち出すプレーも多く行われていて、「こんなにボールを持ち出せる選手なんだ」と少し印象が変わりました。

――思考のスピードもあると思いますが、ボールを止めて、次のプレーに移るスピードと身体の動きに無駄がまったくない選手ですよね。

内藤:そう思います。表現が難しいのですが、シャビのプレーは「今を今にできている」というか、止める、蹴るもそうですが、すべてが連続して行われています。普通の選手は、頭で考える今から、ボールに足が触れたときの今にタイムラグがあるのですが、シャビはそのタイムラグが極めて短い。つまり、全ての動作が速いんです。身体移動が速いのではなく、思考から実行までが速く、ロスがない。結果、プレーが速くなる。どれだけ正確にプレーを行うかを突き詰めると、速さにつながると思っています。

――技術のミスがあると、プレーのスピードは上がらないということでしょうか?

内藤:はい。技術が正確に発揮できると、プレーの精度も上がります。たとえば、来たボールを足元にピタッと止めて、ドリブルもパスもできる位置に置くことができれば、相手チームの選手は対応に迷いが生まれます。同じく、右にも左にも行ける位置にボールを置くと、相手はどちらに行くのだろう?と考えるので、足が止まります。狙いを持って飛び込めなくなるので、寄せも遅くなる。つまり、相手がゆっくりになります。

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一方で、ボールが身体から離れてしまうと、相手との競争になってしまいます。それが理解できると「ボールは身体から離さない方が良いんだな」という思考になり、「頭でイメージしたことを速くボールに伝えるために、ピタッとボールを止めよう」と練習に取り組み、技術が身についていきます。結果、試合で相手にボールを取られる回数が減るというサイクルに持っていければと思っています。

――それがチーム全員の共通理解になると、サッカーの質は間違いなく上がりますね。

内藤:そうなんです。ジュニア年代から、この思考と動きを身につけておくと、今後の伸びしろも上がっていくと思います。大人でもそうで、身体は変わりませんが、思考は変えることができます。ある程度、年齢を重ねたアマチュアプレイヤーは、身体能力ではごまかせない部分があるので、思考や技術といった面を伸ばすことができれば、すぐに変化が出ると思います。(第3回に続く)

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内藤清志(ないとう・きよし)
筑波大学を卒業後、同大学大学院に進学。それと同時に指導者を志し、筑波大学蹴球部でヘッドコーチなどを長く歴任。谷口彰悟や車屋紳太郎など日本代表選手を指導。その後、サッカースクール・ジュニアユース年代の指導を経験した後、現在は筑波大学大学院に戻り自身が所属するサッカーコーチング論研究室の研究活動の傍ら、サッカーの強化・育成・普及活動を行う。