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日本代表の守護神も在籍したFC東京が実践。PA内外のシュートを確実に止めるGKトレーニング

長きに渡り、「GKの発掘・育成」に力を入れているFC東京アカデミー。FIFAワールドカップカタール2022で日本代表のゴールを守った権田修一を筆頭に、各世代別代表に選ばれた波多野豪、青森山田高時代、高校選手権で活躍した廣末陸など、アカデミーから優秀なGKを輩出している。

近年は「GKプロジェクト」の一環として、ジュニアユース、ユースというカテゴリーの垣根を越えてトレーニングする場を設けるなど、様々なチャレンジを続けている。

そこで今回は、育成年代で長くGKコーチを務め、現在はトップチームのアシスタントGKコーチとして活動する山下渉太氏に「シュートストップ」をテーマにトレーニングする様子を撮影させてもらった。

力のあるGKを次々に輩出するFC東京アカデミーでは、どのようなトレーニングが行われているのか? 貴重なトレーニングの様子を紹介したい。(文・鈴木智之)

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W-UPから段階的に基本動作を身に付けていく

FC東京のGKコーチが実践する、ペナルティエリア内外のシュートストップの指導法。前編の動画は、ウォーミングアップ、キャッチ&コラプシング、シュートストップ、ダイビング、角度のないところからのシュートストップ~カットイン(PA外)からのシュートストップという流れで実施していく。

ウォーミングアップから、全体の流れに沿ったメニューが組まれており、「何を意識しながらプレーするか」を明確にしていく。

ウォーミングアップを担当するのは、FC東京U-15深川の来龍哉GKコーチ。メニューは下記の4つが行われた。

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・コーンゴールの間で、移動からのキャッチング(オーバー、アンダー、各種4回)

・2人1組でコラプシングを左右3回ずつ

・横ばいになってボールを持ち、縮んで伸び切る動きを片方4回ずつ

・膝立ちの状態から、バウンドボールに対してアタックを片方4回ずつ

来GKコーチは選手たちのプレーを見ながら「かかと体重ではなく、母指球に体重が乗るように」「移動を速く」など、構えのタイミングや開始姿勢について、専門的な視点でアドバイスをしていく。

コラプシングでは「いかに速くボールにたどり着くか」をテーマに「出しやすいところに手を置こう」と声をかけ、縮んで伸び切る動きでは「体を縮めて伸ばす。股関節、ひざ、足首を進展させる」と、具体的に意識するポイントを簡潔に伝えていった。

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膝立ちの状態から、バウンドボールに対してアタックするメニューでは「ボールに対する高さを意識しよう」などのアドバイスを実施。GKの動作は多岐にわたるため、あれもこれも言いたくなるが、ポイントを絞って伝える様子はさすがである。

シュートストップで大切なのは体の正面でボールを捉えること

続いてのトレーニングは「移動して正面キャッチ、コラプシング」。ここからは山下渉太GKコーチに交代して実施。山下コーチは「ゴールを守る、ボールを奪うマインド。ポジショニングにフォーカスしてトレーニングしていきます」と話し、トレーニングに入っていった。

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設定としては、浮き球とグラウンダーのキックに対して、GKが対応する。ここでは「しっかり正面に入って、ボールを見ること。それは基本的なことだけど、トレーニングが進むとずれることがあるから気をつけよう」と基礎の大事さを改めて伝えていく。

また、GKがこぼしたボールに対する対応も指摘し、「速く動くために、ボールから目を切って動いてしまう選手がいた。実際の試合と同じように、ゲームの状況を見ながらポジションをとることを意識しよう」とアドバイスを送っていく。

ほかには「横からのボールに対して、体の中心と顔を向けてプレーすることで、最短距離で届く」「キッカーの位置が左右に寄っており、コースが限定されているときは、ニアポストより前に立つと、体がポストに当たる恐怖心を回避することができる」など、具体的な動作やポジショニングに言及。細かなアドバイスは、GK専門のコーチならではである。

次は「ZONE1のシュートストップ、ダイビング」。キッカーがサイドに1人と中央やや左に1人立ち、サイドの選手、中央寄りの選手の順番でシュートを打つ。

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このトレーニングのポイントは、ウォーミングアップの3番目に行った「体をしっかり伸ばして、自分の最大値を知る」こと。そのため、最初はキックで行っていたが、スピードが早すぎて、最大値を出しにくいと見るや、キックではなくハンドスローにチェンジ。そうすることで、伸び切る感覚を身につけさせていった。このあたりの臨機応変さは参考になるだろう。

前編最後のトレーニングは「角度のないところからのシュートストップ~カットイン(ペナルティエリア外)からのシュートストップ」。

サイドにいるキッカーがドリブルしてシュートを打つので、GKはそれに対応した後、正面寄りからのシュートに対応する流れで実施した。

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以上で、前編のトレーニングは終了。山下GKコーチは「ウォーミングアップで抑えたことを、段階的に指導していきました。シュートストップでは、ボールに寄る、体の中心でボールに対してプレーすることが大切です」と話し、トレーニングを締めくくった。

動画の後編では、GKの選手にもシュートを打たせるなど、発展した形でトレーニングを行っていく。

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【講師】山下渉太/
JFA公認B級、JFAGK-L3級ライセンス保持。東京学芸大ではキャプテンを務めた後、早稲田大学GKコーチとして指導をスタート。2011年にFC東京U-15深川・むさしにGKコーチとして加入。12年からは、U-15深川GKコーチ専任、16年途中からトップチームのGKコーチを担当。2017年~2020年はFC東京U-18でGKコーチを務め、2021年からは、トップチームのGKコーチを担当している。

【講師】来龍哉/
JFA公認B級コーチ、JFA公認GK LEVEL-2級ライセンス保持。
九州共立大学在学中に福岡GKスクールでGKコーチとしてのキャリアをスタート。大学卒業後、東京ヴェルディで指導のキャリアをスタートさせ、様々なカテゴリーのGKコーチを歴任。その後、FCトッカーノ・鹿島アントラーズジュニアユースで経験を積み、2017年よりFC東京に加入。現在は、U-15深川でGKコーチを務めている。