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元Jクラブのコーチが教える!ジュニアの各学年において必要なトレーニングの内容/イベントレポート後編

COACH UNITED ACADEMYのU-8、U-10向けのトレーニング動画の講師として、好評を博している、蹴和サッカースクール代表の上田原剛氏。鹿島アントラーズのアカデミーで15年間指導した後、「選手だけでなく、指導者の育成に携わりたい」という想いで、蹴和サッカースクールを設立。指導を通じて、多くの子どもたちや指導者に影響を与えている。

そんな上田原コーチによる、COACH UNITED ACADEMY会員向けセミナーのテーマは「ジュニア年代の指導で必要な知識と、練習メニューの考え方」。今回の記事では「ジュニアの各学年において必要な、トレーニングの内容」についての講義をお届けしたい。(文・鈴木智之)

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ジュニアの年代別に取り組みたいトレーニングメニューとは?

上田原コーチはまず「練習メニューの話をしますが、あくまでも理想です。皆さんが担当しているお子さんには、ちょっと無理かもしれないと思うかもしれませんが、ひとつの基準として、聞いていただければと思います」と前置きをした上で、小学校1、2年生、3、4年生、5、6年生で、取り組みたい練習内容を提示する。

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メニューは攻撃と守備に分かれており、「1、2年生は、ボールフィーリング、2対1の理解、4ゴールゲーム(3対3)ですね」と話し、説明がスタートした。

「ボールフィーリングは、ボールを止める、蹴る、ドリブルで運ぶこと。『2対1の理解』は、2対1の状況でドリブルかパスかを選びながら、ゴールを目指すことです」

そして「4ゴールゲーム(3対3)」については「非常に大事だと思う」と言葉に力を込める。

4ゴールゲームにはサッカーに必要な要素が詰まっている

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「小学校1、2年生で、技術レベルが低い子、サッカー理解が浅い子にとって、通常の設定である2ゴールは負荷が高いです。でもゴールを4つにして、『右でも左でも、好きな方のゴールを目指していいよ』と言うと、負荷は下がります」

さらに、空いているスペースに進むことや、ボールの周辺だけでなく、広がった位置にポジションをとることなど、「サッカーに必要な要素を、自然と実行するようになる」という。

学年が上がり、3、4年生になると、4ゴールゲームに4対4が加わる。

「3対3はポジションが流動的で、守備はマンツーマンになりやすいです。そのため、なるべくポジションが重ならないように動くことがポイントです。これが4対4になると、僕は『誰がどこに動いてもいいけど、ダイヤモンドをキープしてね』と言っています。そうすることで、サッカーに必要な幅と深さが出てきます」

さらには4対1のロンド(ボール回し)を通じて、離れるサポート、近くに寄るサポート、パスの優先順位なども身につけていく。

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ゾーン1、2をデザインするのは、指導者の役割

「5、6年生でも4ゴールゲームは続けて、2対1と3対2、数的同数を回避する方法のトレーニングもします。プレッシングに関しては、相手がワントップ、ツートップ、マンツーマンの3パターンしかありません。その3つしかないのがわかっているのであれば、ファーストラインを超える練習をするのは、指導者が準備できる部分です」

ほかにも、ロンドから発展して4対2や5対2、3対3+2サーバーのようなトレーニングも適している。その上で「ゾーン1(自陣)からゾーン2(中央部)へのビルドアップに関しては、理屈がわかると、技術レベルが低くても、ボールを前に運ぶことができます」と言う。

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「なぜなら、ゾーン1、2ともに数的優位のゾーンだからです。小学生のうちに、『このようにボールを進めると、ゾーン3、つまりシュートまで行けるよ』と理解させることが大切だと考えています」

ペップ・グアルディオラは「ゾーン1、2をデザインするのは、指導者の責任だ」と語っていたという。上田原コーチは「僕もそう思います」と共感するとともに、「小学生年代では、ゾーン3(相手ゴール前)においては、自由を与えてもいいのではないでしょうか」と語る。

「ドリブルで行きたい選手はドリブルをすればいいし、コンビネーションで崩したい選手はそれでもいいと思います。ゾーン3の『相手ゴール前』までボールを運ぶところは、指導者がデザインするべき部分だと思っています」

動画では、各学年ごとに必要な守備のコンセプトも提示。なかでも「ボールを奪いに行く」ことについては「日本人には特に必要」と話し、その理由も語っていた。

さらに、2対1、3対2、2対2+ターゲット、3対3 4ゴールゲーム、4対1のボール回し、3対3+2サーバーのトレーニング動画を紹介し、ポイントを簡潔に説明するなど、理論と実践の両方から、わかりやすくポイントを提示していった。

質疑応答では指導者のリアルな疑問に回答

最後には、参加者からの悩みに答える時間も設け「選手の技術レベルが様々な場合、どのレベルに合わせて練習するのが良いのでしょうか?」「サッカーを好きになってもらうような練習メニューの工夫やトレーニングのコツを教えてください」など、指導者が抱えるリアルな疑問に回答していった。

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今回の動画は、指導経験豊富な上田原コーチによる、わかりやすい解説やアドバイスが80分に渡って収録されている。どの部分を見ても、指導経験の浅い人にとっては大きなヒントを得ることができるだろう。

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【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。