08.04.2014
いまさら聞けない「体重移動」と「重心移動」の違い/鬼木祐輔(フットボールスタイリスト)
運動するとは、どういうことだろうか? 辞書的な定義でいうと、「物体が、時間の経過とともに空間内の位置を変える現象」であったり、「健康や楽しみのために体を動かすこと」などがある。しかし、スポーツという文脈においては、体重移動と重心移動という2つの解釈が存在する。その2つをどう捉え、どう習得していくべきなのだろうか? (取材・文:澤山大輔 写真:COACH UNITED編集部)
この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>
体重移動と重心移動の違い
フットボールスタイリスト・鬼木祐輔氏は、この点についてこのように考えている。「私は、運動を『人間の重心が移動すること』と定義しています。これは、中村考宏著・『カラダが柔らかくなる筋トレ! "動き"のフィジカルトレーニング』(春秋社刊)から援用させていただいたものです。運動をこのように定義するのであれば、サッカーという運動においても当然ながら移動の際には『重心移動』である必要があります。
人間の重心はへそのちょっと下あたりと、胸の真ん中あたりの2つあり、この重心を動きたい方に素早く傾けることが必要になってきます。そしてへその下にある重心は、2本のアシの間に挟まって乗っかっています。脚というものは、重心を運ぶための手段でしかありません。目的はあくまで、お腹の下にある重心を移動させることです」
では、『体重移動』と『重心移動』の違いはどのあたりにあるのだろうか?
「簡単にいえば、身体を足で押して移動することが『体重移動』です。ヨーイドンで動き出そうとすると、構えて、後ろ足で身体を押し出すことになると思います。あるいは反復横跳びをするときも、身体を足で押すような動きになります。
サッカーの動きにおける体重移動とは『足を出すことが目的になっている』ケースですね。よくあるプレーとしては、相手からボールを奪いに行く際に足を伸ばして取りに行くケースです。
この動きだと実際は足を伸ばした距離しか相手に近づくことができず、重心が軸足に残っていたり、逆に進行方向に重心がかかっていたりするため、相手の急な方向転換に対応できません。いわゆる『足先で行く』と表現されるプレーがこれにあたります」
消耗が少ない、重心移動のメリット
体重移動を繰り返すことで、何が問題になってくるのか? 鬼木氏は、次のように続ける。「一番の問題は、簡単に消耗してしまうことです。例えばサイドステップを行なうとき、逆方向に動こうとするときに重心が残っていると、次のプレーに移る際に余計な力みが入ります。
踏ん張って次のプレーに移ることを繰り返していれば、それだけでプレーが遅くなる上、その都度余計な体力を使ってしまうので消耗してしまうのです。反復横跳びにしても、20秒や30秒で簡単に疲れてしまうのはそういうことです。サッカーは80分や90分プレーするスポーツなので、疲れやすい動きを繰り返していれば終盤にスタミナが尽きてしまうでしょう」
体重移動をすることで、消耗が早くなってしまう。では、重心移動をするとどのような利点があるのだろうか?
「力みなく、スッと動けるようになります。サッカーのプレーにおいては切り替え速度の短縮に繋がりますし、ボールに対してアプローチする際にも重心から移動することで相手に脅威を与えることが可能です。
といっても、何も特別なことをするわけではありません。歩くときに、右足を出して次に左足を出して......といちいち考えている人はいませんよね? 行こうとしたら、足が勝手についてくるはずです。後ろ足で身体を押すというより、重心を支えるために足が勝手に出てくるという形になるはずです。
しかし走るとき、スポーツになると、なぜか足を動かすことが目的になってしまい、結果的に足が動かなくなってしまうのです。ボールを奪いに行く際にも、重心移動を意識することで、ボールを奪うことがより簡単になってきます」
実際の動きについて詳しく知りたい方はCOACH UNITED ACADEMYの動画をご覧ください。
この記事の動画はオンラインセミナーで配信中!詳しくはこちら>>
鬼木祐輔(おにき・ゆうすけ)
サッカーがうまくなるために「身体を上手に動かす」という観点からサッカーを捉え、その方法を一緒に考えいていきます。しなやかで、シュッとしていて、立ち姿が美しく。 頑張らない、息まない、力まない。サッカー選手をスタイリングして行きます。現在は幼稚園児から高校生までのスクールやチームでサポートを行っております。また、ケガをしないための身体作りやケガから競技復帰までのお手伝い。自分で自分の身体の状態を知るためのお手伝いもしています。ケガでお悩みの方もご相談ください。ノリシロヅクリ.com
取材・文 澤山大輔 写真 COACH UNITED編集部