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アヤックスが改革するジュニア年代の指導法とは? 白井裕之(アヤックス・ゲーム分析アナリスト)

今回は、アヤックスが発表しました「ジュニア年代の育成に関する新たな指導メソッド」についてご紹介致します。これは、ヨハン・クライフ氏のクラブへの帰還後から進められてきたもので、2013/2014シーズンより少しずつ導入され、6月のシーズン終了後に行われますオランダ全土の指導者を対象とした講習会でトレーニングデモンストレーションと一緒に紹介されました。(文・写真/白井裕之)

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■オランダ育成年代の問題点

ここ数年のオランダの育成年代について、アヤックスとして下記の3点をアカデミー内だけではなく、オランダサッカー全体の問題として深刻に受け止めています。

1.基本的なテクニックと運動能力の低下
2.ストリートサッカーとフットサルの文化の衰退
3.過去10年間のオランダの育成年代の指導メソッドの流失と、ベルギー、スペイン、ドイツなどの国々の育成年代の台頭

現在のオランダサッカーの国際的なレベルは、決して低くはありません。2010年のワールドカップ南アフリカ大会では決勝まで進出し、先のブラジル大会では3位になりました。ただ、近隣のサッカー大国のさらなる発展やクラブレベルでの結果を見ると、ここ数年のオランダサッカーの停滞は無視できません。これには、国の大きさ(人口の数)や経済力などその他の要素も大きく関わっていますが、これまで以上にオランダサッカーの国際的なポジションをつかみ取るためには、この問題が現実になる前に対処する必要があると考えています。

そこでアヤックスでは、まず第一にジュニア年代の指導プログラムの改革を進めてきました。その最大の理由としては、みなさんがご存知のように12歳ころまでに身に付けた動作は、その後、年齢が大きくなっても失われることがないこと。逆に、この年齢までにどれだけ子どものスキルを拡げてあげられるかで、その後の選手としてのクオリティーがおおよそ決まってしまうという2点です。アヤックスではジュニア年代のチーム数が2倍になり、今までパートタイムだったこの年代のコーチがほぼフルタイム契約に変わり、さらに多くの各部門の専門家が新たに加わりました。それでは、今回は2つの改革ポイントについてご紹介します。

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■1.ボールのサイズ

オランダでは、従来ジュニア年代でも5号サイズの軽いボールを使用しています。ただ、この年代の子どもたちにはサイズが大き過ぎて、もちろん個人差はありますが子どもによっては膝の高さまできてしまい、サッカーを始めたばかりの子どもたちにとって楽しさを削ぐものです。基本テクニックの習得には、小さなボールの方が子どもたちにとって扱い易く、成功体験が多くできることでより楽しく、ボールを当てる面が小さいのでより正確なボールタッチが必要となるなど、集中力が続かないこの年代の特徴には適しています。選手の成長に合わせた年齢別カテゴリーによって、試合が行われるフィールドの大きさや人数などが変わるのに、なぜ今まで年齢別のカテゴリーでの"ボールの大きさ"を変えてこなかったのかは不思議と言えます。アヤックスでは、子どもの成長に伴いその時に適したボールを使用します。また、トレーニング中にテニスボールやリフティングボールなどさまざまなサイズのボールを使い分けることによって、ボールタッチの強さや方法などを毎回適応させることによって、選手たちにより繊細なスキルを身に付けさせることを目的に実践しています。

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■2.さまざまなフィールドでのトレーニング

オランダでは、ここ10年の間にプロチームやアマチュアのクラブ問わず、人工芝のフィールドが急速に導入されてきました。最近のオランダサッカー協会の規則では、アマチュアクラブは最低でも2面の人工芝のフィールドを持つことを定めています。

ここでの問題点としては、人工芝のフィールドではボールがあまりにも規則正しく転がり、また弾むことによって子どもたちのボールを扱う際のコーディネーションの発達にはマイナスです。

アヤックスでは、この問題を解消するために、石畳の上や体育館、または芝のフィールドなどさまざまな種類のフィールドで行い、不規則に動くボールをコントロールすることでコーディネーション能力やアスリートとしての身体的な能力の開発や発達に最適だと考えています。

動きのスキルやボール扱いのスキルについて、アヤックスでは従来から行われているトレーニング内容に加え、今回ご紹介しました「さまざまなボールのサイズ」や「さまざまなフィールドでのトレーニング」を導入して子どもたちのコーディネーションやテクニックに新しい負荷を掛けています。それだけではなく、やはり現在では失われてしまったストリートサッカーのクラブ内での再現があります。子どもたちがお互いに自由に、いろいろな環境でサッカーを遊びの中で学んできたことがこの年代の子供達には一番良いと考えています。そこでは、コーチはあくまでもファシリティーという考えで、子どもたちが率先してトレーニングできる環境作りを目指しています。

次回は、改革のポイントであります「新しい試合形式、選手の人数とフィールドの大きさ」について、さらにご説明します。

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白井裕之(しらい・ひろゆき)
1977年愛知県生まれ。18歳から指導者を始める。24歳のときにオランダに渡り複数のアマチュアクラブのU-15、U-17、U-19の監督を経験。2011/2012シーズンから、AFCアヤックスのアマチュアチームにアシスタントコーチ、ゲーム・ビデオ分析担当者として入団し、その後、2013/2014シーズンからアヤックス育成アカデミーのユース年代専属アナリストとして活動中。UEFAチャンピオンズリーグの出場チームや各国の優勝チームが参加するUEFAユースリーグでも、その手腕を発揮し高い評価を得ている。オランダサッカー協会指導者ライセンスTrainer/coach 3,2 (UEFA C,B)を取得。

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