TOP > コラム > U10から取り組む状況に応じたファーストタッチの練習法!ファーストタッチはポジショニングとセットで考える

U10から取り組む状況に応じたファーストタッチの練習法!ファーストタッチはポジショニングとセットで考える

サッカーをプレーする上で、欠かすことができない技術。それが「ファーストタッチ」だ。ボールをコントロールするために行う最初のタッチは、ドリブル、パス、シュートの一歩目であるため、状況に応じて適切なタッチを行いたい。

そこで今回はCOACH UNITED ACADEMYでおなじみ、蹴和サッカースクール代表の上田原剛氏に「状況に応じたファーストタッチのトレーニング」を実践してもらった。

鹿島アントラーズのアカデミーで15年間指導するなど、子どもたちへの指導経験が豊富な上田原氏は、U-10の子どもたち対して、どのようなトレーニング、アプローチで「ファーストタッチ」を指導していくのだろうか? (文・鈴木智之)

この内容を動画で詳しく見る

uedahara_000.png

次回の記事を読む >> 

パスを受ける前の準備がファーストタッチの質に関係する

1つ目のトレーニングは「3種類のボールのもらい方」をテーマに実施。

上田原コーチは「このトレーニングは、認知やポジショニングもセットで行います」と話し、意図的に相手を動かすコントロール、離れてパスをもらう動き、近寄って寄ってもらう動き、ボールに角度をつけてもらう動きなどにアプローチしていく。

uedahara_001.png

最初のテーマは「動かすコントロール」。設定としては、マーカーで三角形を作り、選手たちは三角形の外側でパスをつないでいく。

最初にパスを受けた選手はボールをピタッと止めて、次の選手へパスを出す。そのパスを受けた3人目の選手は、前にボールを運ぶとともに、体も同時に進んでいく。これが「動かすコントロール」だ。

上田原コーチは「動かすコントロール」をする選手に、次のようなアドバイスを送っていく。

「目的地があって、ボールがあって、自分がいるという体の準備をしよう。試合をイメージして、ボールを触った瞬間に、ヨーイドンで前に出られるようにしよう」

uedahara_002.png

ポイントは、目的地を見て、体の準備をしてボールを触ること。「少し、ボールの後ろから入るぐらいでいいよ」という声をかけるとともに、コーチ自身が体の向き、スピード、ボールタッチなどを実演しているので参考にしてほしい。

続いては「離れて受ける」。これは、ボール保持者にプレッシャーがないときに、味方から離れてボールをもらう動きのこと。設定としては、コーンをDFに見立て、斜めの動きで後ろに下がり、相手を外してパスを受ける。

上田原コーチは次のような声掛けで、実際の試合をイメージさせていく。

uedahara_003.png

「離れている選手にパスを出すときは、パススピードを速く」

「実際の試合では、ボールの移動中に、次に奪いに来る人を見るよね。それがこの練習では次の人だと思って、その人を見てコントロールしよう」

さらにはパスを出した後に、ラインアップの動きを追加。これも実際の試合をイメージした動きになっている。

最後は「寄って受ける」。トレーニングのオーガナイズは「離れて受ける」と同じで、ここではボール保持者に近寄るときに、角度をつけてボールを受けることを強調。

uedahara_004.png

そうすることで、逆サイドの味方を見るための体の向きが作れるとともに、視野を確保することができる。

ほかにも、パスを出したあと、後ろに下がってボールをもらえる位置に動くことにも触れ、「ビハインドサポートを意識しよう」という声をかけていた。

必然的にファーストタッチが磨けるオーガナイズ

2つ目の動画は「3対1で磨くファーストタッチ」。設定としては、グリッド内で3対1のボール回しを行う。

uedahara_005.png

上田原コーチは「最初に行ったトレーニングに、相手をつけて3対1をします。意図的に空いているスペースにコントロールしたり、相手のラインを切ってパスをもらったり、ワンタッチなどの条件をつけていきます」と話し、トレーニングがスタートした。

ここでは「DFが来ていないときにパスを出すと、次の人が困ってしまうので、相手が来たらパスを出そう」「ボールをもらったら、空いているスペースへコントロールしてパスを出そう」とアドバイス。

uedahara_006.png

続いて「ファーストタッチで必ずボールを動かす」というルールに変更し、足元にボールを止めることを禁止にする。そうすることで、ファーストタッチの意識を高めていく。

また「アンダー2タッチ」というルールを加えることで、ボールの出し手、受け手ともに、素早く準備をするように仕向けていく。

上田原コーチは、ボールを受ける場所、ファーストタッチに目を向け、技術的なミスなのか認知やポジショニングのミスなのかを見極めて、原因を伝えていく。

「ボールだけを見ると、ボールの情報しか入らない。次の状況の背景の中にボールがあるとらえ方をしよう。上手い選手ほど、ボールの周囲を見てプレーしています」

uedahara_007.png

次に「必ず2タッチ」というルールに変更。パスの出し手、受け手ともに、ポジショニングが良くないとミスをする設定だ。

ここでは「ボールを受ける場所、大丈夫?」「何を見てる?」「どういうボールのとらえ方をしている?」などの声をかけていく。

さらには、ボールと一緒に下りながら受けることで周囲を見る時間を作り、相手のプレッシャーを回避してパスをする動作を実演していった。

uedahara_008.png

最後は「ドリブルかパス(ポジショニング)、ファーストタッチのいずれかでDFのラインを越える」というルールを追加。実際の試合に近い動きへとルールを変えることで、習得させたいプレーが出るようにする指導手腕は秀逸だ。

ぜひ動画を通して見て、上田原コーチのトレーニングの意図やポイントを深く理解していただければと思う。サッカーを始めた初期段階の子どもたちにとって、身につけておきたい要素に、的確にアプローチするためのヒントが得られるだろう。

次回の記事を読む >> 

この内容を動画で詳しく見る

【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。