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ファーストタッチは認知とポジショニングが重要!技術面と認知や判断の戦術面をセットで磨くトレーニング法

鹿島アントラーズのアカデミーで15年間指導し、現在は蹴和サッカースクールの代表として、多くの子どもや指導者を向上に導いている上田原剛氏。過去に、COACH UNITED ACADEMYに数回出演してもらったが、いずれも「指導がわかりやすい」と評判だ。

今回はU-10年代を始め、基礎として身につけておきたい「ファーストタッチ」にフォーカスしたトレーニングを実施してもらった。

トレーニングのポイントは、ファーストタッチを単純に技術としてとらえるのではなく、状況の認知、判断とセットで考えること。「そのミスは技術のミスなのか、判断のミスなのか?」を見極めることで、より的確にアプローチしていく。熟練の指導者による、きめ細かく、わかりやすい指導は必見だ。(文・鈴木智之)

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ポジショニングとファーストタッチをセットで磨く

状況に応じたファーストタッチのトレーニング。動画は「ポジショニングとコントロール」をテーマに「2対1+2対1」を行う。

上田原コーチは「ポジショニング、幅や高さの調整。状況に応じたファーストタッチにアプローチしていきます」と話し、トレーニングに入っていった。

設定としては、グリッドを真ん中でセパレートし、各グリッドで2対1の状況を作る。「グリッドを越えて、人の移動はできない」というルールの中、攻撃側は2対1の状況で、逆サイドのグリッドにいる味方にパスを出す。守備がボールを奪ったら、奪われたチームと役割を交代する。

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上田原コーチは「ボールを離れてもらう、寄ってもらう、ファーストタッチで動かすなどしてみよう」とアドバイスし、パススピードにも言及。

「味方がいいポジションを取っていても、パスが遅いと状況が変わらない。パスにメッセージをつけよう」

パスを受けた味方に前に行って欲しい場合は、少し前にパスを出すこと。その際に、ゴールという目的地があるので、体を運び、前向きに準備をしてからボールを受ける動きを実演。

「ファーストタッチとポジショニングはセットだよ」と声をかけ、パスを受けるときのポジショニングに対して、3つのパターンを提示していく。

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「パスを受ける選手の高さは3つあります。まず、相手(DF)とのライン上で受けるときは、ファーストタッチで越えられるようにすること。もう1つは、相手の守備ラインを超えた高さでボールを受けること。そして、ボール保持者にプレッシャーがかかっていたら、相手の守備ラインよりも低い位置でサポートに入り、ボールを受けます」

状況を観て、3つの高さを調節することを教え、実践の中でチャレンジしていった。

4ゴールゲームで取り組む状況に応じたファーストタッチの実践

続いての動画、テーマは「ポジショニングとコントロールの実践」。ここでは「4ゴールゲーム(3対3、4対4)」を通じ、実践形式で認知や判断、ポジショニングやファーストタッチにアプローチしていく。

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「ミスが起きたときに、選手は技術的なミスだと思ってしまうことが多いのですが、実は観ていなかったという認知のミスであったり、ポジショニングのミスのことがあります。その点についてもコーチングしていきます」

設定としては、グリッドにゴールを4つ設置。シュートゾーンを設け、相手のシュートゾーンに入れば、左右どちらのゴールにもシュートが可能。ゴールキックはシュートゾーンからドリブル、またはキックインで開始する。最初は3対3から始め、4対4の場合は、ダイヤモンドの形を意識したフォーメーションでプレーする。

このトレーニングで上田原コーチがアドバイスしたのが、相手にマンツーマンでつかれているときは、相手の正面からずれて、相手のプレッシャーを受けないようにすること。

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ほかにも「ビルドアップのときは、安全に前にボールを進めたいので、ボールを失わないために、自分が見えている方向へプレーを進めよう」と話し、プレーエリアによって目的が変わるため、プレーを変えることにも言及していく。

「場所によって、攻撃と守備の目的が変わります。自陣エリアでは前進することが目的。シュートゾーンに入ったらゴールが目的。なので、守備側は自陣エリアでは前進させないこと、ボールを奪うこと。シュートエリアではゴールを守ることを意識しよう」

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技術面だけでなく、認知や判断も合わせてコーチングしているので、それが「試合で活きる技術」へと昇華していく。このあたりのコーチングのポイントやデモンストレーションなどは、ぜひ動画で確認してほしい。

上田原コーチはトレーニング終了後、子どもたちに、次のようにアドバイスを送った。

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「状況に応じたファーストタッチは理解できましたか? ファーストタッチだけでは解決できないこともあります。ポジショニングも大切です。周りを観て、いい準備ができているからこそ、いいファーストタッチにもつながります」

「ミスをしたときは、技術的なミスだと思いがちだけど、本当にそうかを自分の中で考えてみよう。ボールを受ける場所が違っていたら、ミスをしていなかったケースもあります。それはポジショニングのミス。それを自分で分析できると上手くなるよ」

最後のアドバイスは、子どもたちだけでなく、指導する立場のコーチにも当てはまるだろう。ぜひ今回の動画を観て、日々のコーチングに役立てていただければと思う。

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【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。