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サッカーがどんな競技か明確にならないと練習メニューに悩む。元Jクラブアカデミーコーチによる指導者講習会レポート

2023年夏、COACH UNITED ACADEMY会員に向けた、指導者講習会が行われた。講師はCOACH UNITED ACADEMY動画で人気を博している、蹴和サッカースクール代表の上田原剛氏。

上田原コーチは、鹿島アントラーズのアカデミーや各種トレセンでコーチを担当。現在は子どもたちだけでなく、「お父さんコーチ向け練習会」を開催するなど、育成に幅広く携わっている。

今回はCOACH UNITED ACADEMY会員限定で行われた、座学&指導実践の一部を紹介したい。(文・鈴木智之)

上田原氏のトレーニングが見れる
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(上田原剛氏と指導者講習会に参加したCOACH UNITED ACADEMY会員のみなさん)

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育成で大切なのは、選手をやる気にさせること

上田原コーチは15歳のときにジーコにスカウトされ、鹿島ユースに加入。その後、大学を経て、指導の道に入った。ブラジルのCFZを経て、鹿島アントラーズのアカデミーで15年間指導した後、茨城県のトレセンやナショナルトレセン関東U-12を担当するなど、豊富な経験を持つ指導者だ。

上田原コーチは座学の開始時に「サッカーよりも大事なことがあります」と前置きし、参加者に「あなたはどんなコーチですか?」と質問を投げかける。

「今日はサッカーに関するセミナーですが、参加してくれているのが指導者の方なので、この質問をさせてください。ご自身がどんなコーチなのか、考えてみてください。自分のことは、自分が一番わかっていなかったりします。なので、子どもたちを教える前に、自分自身を知ることから始めてみましょう」

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参加者は上田原コーチの問いをきっかけに、自分はどんなコーチなのか? と考えを巡らせていく。続いての質問は「育成とは何ですか?」だ。

「ゴールが決まらないと、いま何をしていいかがわかりません。そのため指導者の方は、育成とは何かを明確にしておいた方がいいと思います」

そこから「どんな選手を育てるか、明確になっていますか?」「サッカーとは、どんなスポーツですか?」と投げかけ「練習メニューに悩む方は、ここが明確になってない方が多いです」と指摘する。

続いて「現象ではなく、原因を見抜く力はありますか?」「選手との関係性を重要視していますか?」「指導の際に許せる部分とそうでない部分を理解していますか?」と投げかけていく。

「僕は愛情と理論とユーモアを大事にしています。そして、必要なときに必要なものでアプローチできるコーチ、選手も想像できないぐらいのステージに導けるコーチを目指しています」

自分はどんなコーチなのか、何を目指しているのか。これらは練習メニューや戦術といった、指導内容の前に明確にしておきたい部分だ。

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さらには「育成で大切なのは、選手をやる気にさせること」と話し、「選手の心のコップが、上を向いた状態を作ってあげることに尽きる」と言葉に力を込める。

「心のコップが下を向いた状態では、何を言っても入りません。やる気になっていると、言い方は悪いですが、勝手に練習し始めます。そこがすごく大切で、僕の中では『育成とは何ですか?』と聞かれたら『選手をやる気にさせること』と答えています」

指導者の出発点は、サッカーがどんなスポーツかを理解すること

続く「どんな選手を育てるか、明確になっていますか?」という問いに、上田原コーチは「自ら考えて行動できる選手」と答え、良い選手の3条件を紹介。それが以下の3つだ。

・自己管理ができる(ケガをしない。常に良いコンディション)
・適応力×対応力が高い(どの監督にも必要とされる。どんな状況でも戦える)
・絶対的な武器がある(プロにはそれだけで食べていける選手もいる)

セミナーでは各項目を紐解きながら、「何を言うかより、誰が言うか」「結果を求めるなら、関係の質向上に目を向ける」といった、選手を成長に導く上で大事にしたいポイントが提示されていった。

そして「サッカーとは、どんなスポーツですか?」という問いには「サッカーとは戦いである。何の戦いかというと、ゴールを奪う、ゴールを守る、そのためにスペースと時間を奪い合う戦いと定義しています」と回答。

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「そこが定義されないと、練習メニューに悩むんですね。なので、全ての出発点は、サッカーがどんなスポーツかを理解すること。これは人それぞれですが、自分の中で明確にした方がいいと思います」

これらを踏まえた上で、セミナーは具体的な内容に入っていく。上田原コーチは「技術的なことより、戦術的なことで困っている選手が多い」と話し、「それはどの年代を見ても感じることなので、日本サッカー全体の課題なのではないか?」と投げかける。

さらには、戦術を「試合中に起きる問題を解決するための行為である」と定義し、「育成年代では10年後、20年後も変わらずに大切なこと、普遍的なことを長期的にトレーニングすることが大事」とメッセージを送った。

ほかにもスペースの概念やポジショニングについてなどの説明をした後、「止める、蹴る、ポジショニングの指導」をテーマに1、2年生、3、4年生、5、6年生向けのトレーニングメニューを紹介。

現役のプロサッカー選手との対談や質疑応答など、濃密な内容が届けられた。以上で座学は終了。次回の記事では、指導実践の様子をお伝えしたい。

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【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年〜2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。