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知識や専門機材がなくても大丈夫!チームや個人をレベルアップさせるために必要な「ゲーム分析」の実践方法

指導をする上で、チームや個人をレベルアップさせるために必要なのが「分析」だ。しかし「試合を見て、どう分析すればいいかがわからない」「分析はできるけど、トレーニングにどう落とし込めばいいの?」といった悩みを持つ人も少なくないだろう。

そこで今回は「サッカーコーチのコーチ」として活動中の倉本和昌氏に、「試合の現象や課題を、トレーニングに落とし込むゲーム分析の実践方法」を紹介してもらった。

スペインやJクラブでの経験が豊富で、現在はオランダ在住の倉本氏による「お父さんコーチでもできる」ゲーム分析の実践方法。分析に興味のある人や、分析はしているが、チームや選手の強化につながっているか不明瞭な人にとって、必見の内容だ。(文・鈴木智之)


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試合の映像を撮って見返すことは、コーチとして絶対にやるべき

試合分析の悩みに関して、倉本氏は4つのポイントを挙げる。それが「試合をどう見ていいいのかがわからない」「試合中の変化に気づけない」「負けた原因が見抜けない」「勝つための策を出したい」だ。

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それらを踏まえた上で、「まずは試合を撮影しましょう」と呼びかける。

「自分はお父さんコーチだから、うちは少年団だから、弱いチームだからなどは関係なく、試合の映像を撮って見返すことは、コーチとして絶対にやった方がいいと思います。なぜなら、試合中、指導者としてベンチで見ていて感じる主観と、試合後に映像を見返すことで感じる客観にズレが生じることがあるからです」

ベンチから見ていると、良いゲームができたと思っていても、映像で見るとミスが目立ったり、悪い内容だと感じていても、実際はそれほど悪くはないといったことがある。

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「主観と客観の両方が必要で、試合の分析をしないと、選手やチームが良くなっているかどうかがわかりません。ただ練習をして、試合をしただけになってしまいます。チームのパフォーマンスを向上させるためにも、試合を分析することは、とても重要なことなのです」

分析するための映像は、スマホやタブレットで撮影すればいい。倉本氏は「高価な機材は必要ありません。できればピッチよりも高い位置から撮影し、全体像が映るようにすると良いと思います」と話す。


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分析をする前段階として、『サッカーとはどんなスポーツか』を定義する

ここからは、分析をする前段階として、知っておきたいことについて。倉本氏は「まずは『サッカーとはどのようなスポーツか』を定義することが大事」と言葉に力を込める。

「私はサッカーを、チェスや将棋のようなボードゲームだと捉えています。もちろん人間がするものなので駒のようにはいきませんが、サッカーは陣取り合戦で、そのツールとしてボールがあると解釈しています」

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サッカーの定義が「ボールを扱う、ボールゲームである」と解釈する人と「陣取り合戦である」と考える人とでは、フォーカスする事象が大きく異なる。そのため、まず自分はサッカーをどう定義するかが大事なのだという。

「サッカーはドリブルやフェイントを披露して、評価するスポーツではありません。そこを間違えると、試合の分析自体を間違え、結果として練習メニューも間違えることになってしまいます」

倉本氏はサッカーを「ゴールを奪うために、スペースと時間を取り合う闘いであり、ゴールルートを作るために、主導権を奪い合う闘いである」と定義している。

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「私はゴールルートを作る、主導権を握る闘いであると定義しているので、それをもとに練習を組み立てていきます。パスのトレーニングは何のためにあるのか。それはゴールへのルートを繋げるためであり、正しく繋げられるようにするためです」

ポゼッショントレーニングを何のためにするのか? それは「ゴールへのルートを繋げる、または相手のルートを阻止して、自分のルートに戻すために行う」といったように、サッカーを「ゴールルートを作る主導権を奪い合う戦い」と定義することで、トレーニングを構築する際の土台にもなる。

試合を分析するときも、サッカーの定義をもとに見ていくと、わかりやすいという。

COACH UNITED ACADEMY動画では、試合を分析する際の3つの視点として「GKの目線で、ピッチを縦方向に見る」「ピッチに対して、高いところから見る」「作戦ボードと実際の試合を交互に見る」といったノウハウも伝えられている。

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「私はピッチサイドで試合を見ながら、作戦ボードを使って、自分のチームと相手チームの選手を配置し、どこにフリーマンができそうか、どこにフリーなスペースができそうかを確認していました。ボード上ではここにスペースができそうなのに、実際の試合ではどうなんだろうという視点で、目の前の試合と行き来していました。ぜひ試してみてください」

動画では、他にも「ボールを追いかけると感情的になってしまう」「ボールを追いかけるのではなく、なぜその現象が起きているのか、理由を探す」「理想のサッカーと現実のサッカーの違和感、ズレを言語化する」など、分析時の具体的なポイントを様々な視点から紹介している。

分析能力を上げたい人、もしくはこれから分析を始めたい人は、ぜひこの動画を視聴してほしい。サッカー指導者として、レベルアップするヒントを得られるはずだ。

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【講師】倉本和昌/
サッカーコーチ専門コーチ。高校卒業後、スペインのバルセロナに留学。アスレチック・ビルバオにて育成の仕組みについて学び、スペイン公認上級ライセンスを日本人最年少で取得。帰国後は湘南ベルマーレ南足柄、大宮アルディージャのアカデミーでコーチを務め、2018年よりサッカー専門コーチとして独立。Jクラブ、大学、高校、町クラブ、幼児など様々なカテゴリーのコーチをサポートしている。2021年12月から家族5人でオランダへ移住し、ヨーロッパのサッカーの様々な情報を発信している。