チームとしては相手の逆をとること、個人の良さを伸ばすことに意識を向けており、選手一人ひとりの個性を伸ばすことを重視している。
そこで今回は相手と駆け引きをし、逆をとるために必要なポイントを、U-12のコーチを務める、高橋慎一氏に実践してもらった。
激戦区・千葉で上位を争うチームでは、どのような指導のもと、個を伸ばしていくのだろうか?(文・鈴木智之)
駆け引きを上達させる「相手の逆をとる」トレーニング。動画前編では「駆け引きに必要な基本技術の習得」をテーマに、ドリブルや4対2、1対1+サーバーを行っていく。
トレーニング前、高橋コーチは「相手の逆をとるためには、駆け引きをしながら、相手をしっかり見ること。相手の動きを予想することが大切です」と話し、「ボールを受ける位置やボールの置き所、体の向き、目線、足首などを上手に使いながら、ゴールを目指すことがポイントになります」と説明する。
最初のトレーニング「フリードリブル&コントロール」では「選手自身のチャレンジが大切になるので、そのチャレンジを促すよう、コーチングにも気をつけて取り組んでいきます」と、指導をする上での心構えを提示。
設定としては、グリッド内で各自ボールを持ち、自由にドリブルをしていく。高橋コーチは「自分のイメージの中でドリブルをしよう」「相手がいるイメージで、上半身を揺さぶるなど、駆け引きをしてドリブルをしよう」とアドバイス。
続いて「体の向きや目線を意識しながら、逆をとること」を、デモンストレーションを交えながら説明していく。
「スピードは意識しなくていいけど、ボールの置所は意識しよう。相手がいるイメージの中で、ボールをどこに置くか。足首でボールの位置クッと変えられるといい」
その後、「7人がドリブルし、6人が動きながらボールをもらう」というルールにチェンジ。ここでもドリブルの選手は「足首を使いながらボールを触り、相手の逆をとること」の重要性に触れていく。
オフ・ザ・ボールでは、動きながらボールをもらうときに、ただ動くのではなく、「自分から近寄ったり離れたりする事」と、コントロールで相手の逆をとれるようにイメージする事」を重要視。
「体の向きを意識しながら、足首やステップワークで逆を取れるようにしよう」とコーチングを行っていった。
]]> ゴールを狙える位置にボールを置くと複数の選択肢が持てる2つ目のトレーニングは、12m四方のグリッドで行う「4対2」。いわゆるロンドのトレーニングだが、パスだけでなく、ドリブル突破を推奨する。
高橋コーチは「ただボールを動かすのではなく、対角線上へのドリブル突破を意識してほしい。前提はボールを大切にし、失わないこと。フリーになったら、自分から仕掛けよう」と声をかけていた。
ここでは、ボールを受けたときの体の向きや、目線でフェイントをかけながら、相手が食いついてきたらパスorドリブルなど、複数の選択肢を持つことの重要性を強調。
周囲との関わりの中で、相手と駆け引きをすることに意識を向けていった。
前編最後のトレーニングは「1対1+サーバー」。15m四方のグリッドで実施し、攻撃側はゴールを目指し、守備側は奪ったボールをサーバーへパスすると攻守交代となる。
ここで高橋コーチが強調したのが「(目的である)ゴールを目指してボールをコントロールすること」。
「受けたボールを、ゴールを狙える位置に置く。そのコントロールを意識しよう。ゴールを目指すために、そのトラップを大事にしないといけない」と話し、「守備がゴールを守ろうとしたら、カットインすることもできる。このトラップがすべて。ゴールを意識しながらプレーしよう」と伝えると、次々に良いプレーが出始めていた。
高橋コーチは「前編では、フリードリブルや4対2、1対1で相手との駆け引きや、複数の選択肢を持ちながら、相手を見て決断するトレーニングを行いました」と振り返った。
「最初のフリードリブルでイメージをつけて、4対2では、目的に対してボールを受ける位置を考えることや、積極的なチャレンジに取り組みました。1対1ではコントロールで相手をはがすことや、駆け引きから突破するところがポイントになります」
後編では、グループでのトレーニングに移行し、複数の選択肢を持ちながらゴールに向かうプレーを指導していく。
]]>エコロジカル・アプローチとは「トレーニングの設計、制約によって技術が身につき、定着するようにデザインする」という指導法で、欧米では広く知られ、実践されている。
COACH UNITED ACADEMYでは、植田氏による「エコロジカル・アプローチに学ぶ、個人スキルとチーム戦術の学習に有効な指導理論」の動画を公開中。
後編では「エコロジカル・アプローチに基づいた、トレーニングの考え方と実践法」について、どのようなトレーニングが効果的なのか? を深掘りしていく。(文・鈴木智之)
エコロジカル・アプローチでは「練習環境が試合環境を再現できているか?」を重視しており、トレーニングは『タスクの分解』ではなく『タスクを単純化せよ』という方針を掲げている。
「タスクの分解とは、一つのスキルを取り出して反復練習し、試合に差し戻したら、できるようになるという考え方です。タスクを分解するので、敵がいなかったり、ルールの一部がなかったり、試合で生じる判断や意思決定がスキップされたトレーニングになりやすいとされています」
一方、前編で紹介した、テニスのバックハンドのスキルドリルのように、センターラインをずらしたゲームは、ゲームの全体性を維持しながら、バックハンドという『向上させたいスキル』が誇張されるトレーニング設定になっている。これを『タスクの単純化』と表現している。
サッカーのトレーニングでは、コートの広さや人数を変えたり、2タッチアンダーからフリータッチなど、ボールタッチに制約を設けたり、リターンパスは禁止など、ルールを変えながらトレーニングすることが一般的だ。
「それを制約操作と言います。ある一つの練習環境、制約下でトレーニングしていると慣れてしまい、学習効果が低くなるので、適宜、新しい制約に変えることが望ましいとされています」
植田氏の著書「エコロジカル・アプローチ」には、「スモールサイドゲームの制約を対象とする、規定組織化グループ(伝統的アプローチ)と、自己組織化グループ(エコロジカル・アプローチ)の比較」というデータがある。
エコロジカル・アプローチでは「トレーニングの設定やルールにバリエーションを持たせることで、さらなる能力の向上に寄与することができる」としており、スモールサイドゲームを例にあげると、伝統的アプローチでは「数的同位(同じ人数)」「選手数の進行(少ないから多い)」「フィールド(正方形から長方形)」「ボール(大中小のサッカーボール)」といった設定でのトレーニングが多い。
エコロジカル・アプローチでは、人数を3対3や4対5、4対3など同数、劣位、優位と次々に変えていったり、フィールドも正方形、長方形だけでなく、三角形や円、ダイヤモンドなど、様々な形で実施する。
サッカーボール以外にもテニスボールやラグビーボール、テクダマのように不規則に動くボールを使ったトレーニングや、プレーエリアを限定したり、異なるスキルを発揮した場合はボーナスポイントを与えるなど、プレーや判断のバリエーションが出るような制約を与えている。
「制約を操作することで、慣れさせないようにします。様々な種類のボールを使うことで、動作のバリエーション、キックのバリエーション、ドリブルやパス&コントロールのバリエーションを増やしていくようなやり方です」
さらに、こう続ける。
「エコロジカル・アプローチでは、コーチが好む運動や戦術的な動きを教えず、制約によってコントロールするのですが、実験したところ、伝統的アプローチよりもスキル習得が高く、チームとしての連動性も高いという結果が出ました」
よくあるトレーニング設定の場合、ある程度のレベルになると、苦もなくできてしまう。エコロジカル・アプローチでは、制約操作によって、常に刺激を与え、異なる環境に適応する過程で能力を高めていくという方法をとっている。
「サッカーのトレーニングの場合、コートがダイヤモンド型で、数的劣位かつ特殊なゴールで、ルールが次々に変わると、いままで感じたことのない刺激を受け、『このゲームに勝つためには、どうしたらいいんだろう』と必死で考えます。そのようにして、選手を慣れさせないよう、新しい刺激を与え続けることが大切なのです」
エコロジカル・アプローチでは「制約操作」の観点から、スモールサイドゲームを推奨している。
「コーチの役割は適宜、制約操作を行っていくことです。球技全体を対象に、分解的なスキルドリルvsスモールサイドゲーム(制約主導アプローチ)を実施し、どちらが早く上達するかを実験したところ、スモールサイドゲームを行ったグループの方が、良いパフォーマンスを発揮できるという結果が出ました」
初心者にいきなりスモールサイドゲームを行わせるのは、難易度が高いと思われるかもしれないが、「タスクの単純化がされていて、本人のレベルに合ったものであれば、良い学習効果が期待できます」と述べる。
COACH UNITED ACADEMY動画では、エコロジカル・アプローチの説明が多岐に渡っており、「ブラジルからタレントが生まれる理由」「クリエイティブな選手ほど、よく遊んでいる」「様々なスポーツをすることの重要性」「ボールマスタリーのトレーニングをする際は、繰り返す数を減らし、次々にメニューを変える」「動作に制約を加えることで技術習得につながる」といったトピックが紹介されている。
どれもコーチとして知っておきたい内容なので、ぜひ動画をご覧いただければと思う。きっと視聴後のトレーニングでは、新たな取り組みにチャレンジする気持ちが沸き上がってくるはずだ。
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【講師】植田文也/
1985年生まれ。札幌市出身。サッカーコーチ/ガレオ玉島アドバイザー/パーソナルトレーナー。証券会社勤務時代にインストラクターにツメられ過ぎてコーチングに興味を持つ。ポルトガル留学中にエコロジカル・ダイナミクス・アプローチ、制約主導アプローチ、ディファレンシャル・ラーニングなどのスキル習得理論に出会い、帰国後は日本に広めるための活動を展開中。footballistaにて「メニューで学ぶエコロジカル・アプローチ実践編」を連載中。著書に「エコロジカル・アプローチ」(ソル・メディア)がある。スポーツ科学博士(早稲田大学)。
今回登場してくれたのは、北海道の栗山町で活動する『くりやまFC』の中川圭太さんだ。
ボランティアコーチとして20年以上に渡り、地域の少年団を指導してきた中川さんに、COACH UNITED ACADEMYの活用方法と指導に対する想いを聞いた。(文・COACH UNITED編集部)
くりやまFCは人口1万人ほどの小さな町の少年団だが、40年以上の歴史を持ち、近年では道内大会で準優勝するなど、北海道では知られた存在だ。指導にあたるのは役場の職員や、教員、保護者などのボランティアコーチが中心。
中川さんも役場に勤めはじめた頃からボランティアで指導に携わっている。「もともとサッカー経験はあったのですが、職場の人に誘われて関わりはじめたのがきっかけでした。そのままハマっちゃって、気がついたら20年以上になります。いまは5、6年生を担当していて、チームにいる年数も長いので他のコーチの相談にのったりすることもあります」
ベテランとしてチーム全体の運営にも携わっている中川さん、その中で少子化の影響は大きく感じているという。
「くりやまFCは全体で約70人が活動しています。2学年ごとを1チームにして活動しているのですが、10年前は1学年に15、6人はいたのも、だんだんと減ってきています。そうした状況で、サッカーをする子どもたちを増やしていくには、地域のチームの環境をよくすることが大切です。そのためには指導者が力をつけていかなければなりません。COACH UNITED ACADEMYに入会したのも、そのためです」
しかし、ボランティアコーチ中心のチームで、学ぶ時間を確保することや、そこに投資をしていくことは難しい面もある。
「たしかに時間や費用の問題はあります。ただ、地方のチームでもいい環境を提供していくためには、学ぶしかありません。私が中心になってCOACH UNITED ACADEMYで学び、その中で良いものをみんなに伝えていければと思い、チームに費用を出していただきました」
※くりやまFCのコーチのみなさん
くりやまFCの指導者は約10人。それぞれ別の仕事を持つため全員が集まって勉強会を開くことは簡単ではない。そうした中で、中川さんがハブとなり、それぞれのコーチに必要な情報をCOACH UNITED ACADEMYの中から伝えていきたいと考えているそうだ。
「チームとしては『ボールを持つ』ことを大切にしています。ボールを失わなければ勝つチャンスも増えますし、何よりサッカーも上手くなれます。パスでもドリブルでも両方でボールを持てるチームですね。同じようなコンセプトを持ったチームのトレーニングは少しずつ真似しています。
普段から他チームの指導者とも話をしたりしますが、お互いの練習を見にいくことはなかなかできません。そうした中で、動画で見れるのはとても良いですし、メニューだけでなく、いつ何を伝えるか、言葉の選び方などは特に参考にしています」
COACH UNITED ACADEMYは、解決したいテーマに対する1日のトレーニングを全て紹介している。「W-UPからゲームまでの全体の流れ」「言葉のかけ方」「改善方法」まで、まるで講師の指導を見学させてもらっているようなリアルな体験が可能だ。そこを価値だと話す人が多いが、中川さんはどう感じているのだろう。
「私もトレーニングを丸っとマネしてみることがあります。当然、動画に出てくる選手と自チームの選手は違うので、うまくいかないことはありますが、その中で、選手がどう反応するのか? どうアレンジしたら変わるのか、自分ならどんな声がけをするか?など、いろいろ試しています。それをスタッフにやってみてもらうのもいいかもしれませんね。同じ練習をやっても声かけひとつで違いますし『うまくいかないのはなんで』って考えることが大きな学びになります。そこで、『俺だったら、ここ気になるな。こう伝えるな』みたいな話ができるといいのかなと」
しかし、COACH UNITED ACADEMYで紹介されている動画は「選手のレベルが高くて自分のチームには合わない」という声も聞く。
「うちも選手によって技術の差はあります。でも、まずやってみて困ったらアレンジしてみればいいんです。コートを広げたり、フリーマンを入れてみたり、そのくらいのアレンジは誰でもできますよね。うまくいかなかったら変えてみればいいんです。困ったら『場所を変えるか、人を変えるか』この2つを試してみるだけでもいいかもしれません。20年やっててもうまくいかないことはたくさんあります。それも学びですよね(笑)」
少子化の中で、サッカーを楽しむ子どもたちを増やしていくには、指導者のレベルアップは不可欠だ。「COACH UNITED ACADEMY」をチームの取り組みとして活用するくりやまFCのケースは、他の少年団チームのヒントになるのかもしれない。
これは指導者にとって、永遠のテーマと言えるだろう。
2023年、トレーニング方法に関して、センセーショナルな書籍が発表された。早稲田大学のスポーツ科学研究科を経て、欧州の名門・ポルト大学大学院でトレーニング学を学んだ植田文也氏による「エコロジカルアプローチ」だ。
エコロジカルアプローチとは「トレーニングの設計、制約によって技術が身につき、定着するようにデザインする」という指導法で、欧米では広く知られ、実践されている。
そこで今回は、日本のエコロジカルアプローチの第一人者・植田氏に「エコロジカル・アプローチに学ぶ、個人スキルとチーム戦術の学習に有効な指導理論」をテーマに講義を実施してもらった。
トレーニングの仕方に疑問を持つ指導者、自主練の参考にしたい選手・保護者など、サッカーに携わる多くの人にとって、有益な情報提供になっている。(文・鈴木智之)
サッカーの技術を習得させるにあたり、どのようなアプローチが効果的なのだろうか? 多くの人は「正しい手本を示し、その通りの動作を繰り返す」という方法が思い浮かぶことだろう。
これは「伝統的アプローチ」と呼ばれるもので、「運動には正しい動作がある」という仮定のもと、同じ動作を繰り返して体に染み込ませ、習得させていく方法だ。
一方のエコロジカルアプローチは「制約主導アプローチ」と呼ばれ、環境(ボールやグラウンド、ルール等)を操作することで制約を生み出し、運動課題を与えることで技術を習得させるという方法のことである。
動画では「伝統的アプローチ」と「制約主導アプローチ(エコロジカルアプローチ)」の違いを、「テニスのバックハンドを習得する」という行為を例に説明。
植田氏は「伝統的アプローチは、試合中のプレーからバックハンドスキルを取り出し、それを反復させることで習得を促し、試合に戻すとバックハンドを使い始めるのではないかという考え方です」と話す。
一方のエコロジカルアプローチは、腕の振り方、ひじの角度といった技術指導や反復ドリルはせず、トレーニングの中に制約課題を設けることで、自然とその動作を繰り返し行う環境を作り、その中で身につけていく方法をとっている。
「これはひとつの例ですが、テニスのバックハンドを習得する場合、エコロジカルアプローチだと、センターラインをずらしたコートを作り、対角線にボールが入るとポイントにするといった制約を設けます。つまり、バックハンド側のスペースを大きくして、このゲームに勝つには、バックハンドが有効だという環境を作り、自然と出るように仕向けるのです」
伝統的アプローチとエコロジカルアプローチのどちらが、練習前と後でフォアハンド、バックハンドの比率が改善したのだろうか?
「エコロジカルアプローチの方が改善され、伝統的アプローチはほぼ改善されませんでした。テニスに限らず、伝統的アプローチよりもエコロジカルアプローチ方が、人間の運動に与える影響は大きいという研究結果はたくさんあります」
これはサッカーも同様だ。ドリブル、パス、シュートといった技術に対して、コーチが蹴り方や仕方を教えて、同じ動作を繰り返し行わせるのが、伝統的アプローチである。
エコロジカルアプローチは技術的な指導はほとんどせず、パスやシュートであれば距離や角度、ルールなどの制約をこまめに変えて、環境に適応させる形でトレーニングを行っていく。
「伝統的アプローチとエコロジカルアプローチのグループを作り、それぞれの方法で練習した後、試合の中で選手一人ひとりがどのようなスキルを使っているかをカウントした研究があります。エコロジカルアプローチの方が、試合中のアクション回数が多く、成功回数も多いという結果が出ました」
さらに、キックであればインサイド、インステップ、アウトサイド、ヒールといったバリエーションも豊富で、創造的なプレーの回数も多かったという。
「エコロジカルアプローチは、そもそも正しいとされる動きを教え込むことをしないので、クリエイティブなプレーが出やすい。そこはひとつのメリットとされています」
エコロジカルアプローチは技術習得だけでなく、「一度学習したスキルが、どれほど維持されているか」という部分でもメリットがあるという。
「伝統的アプローチのグループとエコロジカルアプローチのグループで、テニスのフォアハンドストロークのトレーニングをし、4週間後にどれぐらいスキルが維持できているかのテストをしたところ、エコロジカルアプローチのグループは7つの打ち方のうち5つが維持されていました」
一方の伝統的グループは、実際にできた打ち方が減り、内訳もバラバラだったという。
「伝統的アプローチは指導者が好む打ち方をさせる、つまり鋳型に押し込んでいくような教え方なので、元々持っている動作バリエーションが減ってしまいます。それも伝統的グループの特徴です」
COACH UNITED ACADEMYの講義では、エコロジカルアプローチのメリットを、様々なデータや実例をもとに紹介されている。
「スキルはコーチが教えるのではなく、運動課題が教える」「コーチの役割は、手取り足取り、運動そのものを教えるのではなく、運動課題をデザインすること。つまり制約のデザイナーである」といった考え方を知ることで、トレーニングに対するアプローチ方法が変わっていくのではないだろうか。
後編では、どのようにしてサッカーのトレーニングにエコロジカルアプローチを用いるかなど、具体例をもとに解説していく。
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【講師】植田文也/
1985年生まれ。札幌市出身。サッカーコーチ/ガレオ玉島アドバイザー/パーソナルトレーナー。証券会社勤務時代にインストラクターにツメられ過ぎてコーチングに興味を持つ。ポルトガル留学中にエコロジカル・ダイナミクス・アプローチ、制約主導アプローチ、ディファレンシャル・ラーニングなどのスキル習得理論に出会い、帰国後は日本に広めるための活動を展開中。footballistaにて「メニューで学ぶエコロジカル・アプローチ実践編」を連載中。著書に「エコロジカル・アプローチ」(ソル・メディア)がある。スポーツ科学博士(早稲田大学)。
低学年を指導する際、伝えるのに苦労するのが「守備」について。ある程度の原理原則に基づくため、ポイントを絞って伝えることが重要になる。
そこで今回より、GO FOWARD 愛知でコーチを務める対馬武志氏に「2人で協力して、相手のボールを奪う守備の基本」を教えてもらった。
対馬氏はA級ジェネラルを保有し、アルビレックス新潟や松本山雅でU-12の監督を務めるなど、ジュニア年代での豊富な経験を持っている。
子どもたちが楽しくプレーしながら、わかりやすく守備の原理原則を学ぶために、どのようなトレーニング、声かけをしていくのだろうか?(文・鈴木智之)
最初のトレーニングは「ドジング」。これは1対1のことで、攻撃側は片方の手のひらの上にボールを乗せた状態で、守備側の背後にあるライン通過を目指す。守備側はボールを奪うのではなく、相手の動きに対応していくというトレーニングになっている。
対馬コーチは開始前、「このトレーニングでは、守備の対応で重要となるステップワークを身につけることを狙いとしています」と話し、「相手の正面に入り続けること」をポイントに挙げた。
トレーニング中、対馬コーチは「攻撃側は、相手を横に動かして(自分の正面が空いたら)突破するイメージを持とう」と声をかけ、守備側には「相手と一定の間合いを保ちながら、相手の正面に入り続けること」を強調。
「守備側は、相手の真正面に入って、一番近い道を塞ごう」「攻撃側は、正面が空いたと思ったら、前に進んで行こう」
さらには具体的な姿勢にも言及し、「守備の選手が、攻撃の選手の正面に入り続けるためには、片方の足を前、片方を後ろにしよう。足を前後にして、上半身は相手に向けて、正面に立つ」とデモンストレーション。
上半身を横に向けすぎてしまうと、向いている方向には速く動くことができるが、背中側に進まれると対応が遅れやすくなり、振りきられやすくなってしまう。そのあたりをわかりやすく説明していく。
そして「守備は相手がサイドに来たら、進行方向を塞いで、体を当てて押し出してもOK(手を出して押すのはなし)」というルールを設定。
相手が真ん中にいるときにサイドに押し出そうとすると、すり抜けられてしまうので、いつ、どのタイミングで寄せに行くのかなどを体感させていった。
続いての動画のテーマは「相手のボールを奪う、体の入れ方」。トレーニングは「1対1(ラインゴール)」で、場の設定は先程と同じ。今回は攻撃側が足でボールを扱って行っていく。
このトレーニングは、ルール設定が特殊である。攻撃側は「タッチ数7回以内」または「7秒以内」でライン通過を目指し、守備側は「意図的に足を出してボールに触ることなくボールを自分のものにする」というルールのもとで行う。守備側としては、「自ら足を出してボールを触りにいくことができない」という制約があるので、相手の足からボールが離れたタイミングを見計らって、体をぶつけてマイボールにしたり、相手とボールの体の間に自分の体を入れてマイボールにしたりすることを学んでいく。
対馬コーチは、股抜きをした攻撃の選手に対して、すぐに反転して体を入れて、ボールを奪ったプレーに対して「素晴らしい!」と賞賛。
「相手とボールの間に、自分の体を入れて奪った。このように、相手にドリブルをさせてボールを奪うことをやっていこう」
ここでは、相手との間合いについて説明。
「相手との距離が遠いと、攻撃側は怖さを感じないよね? 一歩足を伸ばして触ることのできる距離を保って、相手にボールを運ばせて奪おう」
ボールの奪い方として、相手に体をぶつけて、相手をボールから遠ざける「どいてください」と、相手とボールの間に体を入れる「お邪魔します」の2パターンを提示。
「これが相手にボールを運ばせて、奪うやり方です」と、年齢に合わせた、わかりやすい表現で伝えていた。
最後は制限時間6秒に短縮。「守備の選手は、時間切れも狙ってね。攻撃側はどこかで勝負を仕掛けてくるから、そこに対して奪いに行く。そのトレーニングだよ」とポイントを説明。
たとえボールを奪えなくても、「次は取れそうだ」「さっきより良くなった」など、ポジティブな声かけを実施することで、前向きにチャレンジする環境を作り出していった。
また、プレーの原理原則もわかりやすく伝え、「"今"のところではなく、相手が行きそうな"未来"のところに先回りしよう」とアドバイス。
「速い相手の場合"今"のところに行くとすり抜けられてしまう。相手の方が速いと思ったら"未来"のところに行って体を入れたり、ぶつけたりしよう」
今回の動画は、経験豊富な指導者ならではの説明や雰囲気作りなど、参考になること間違いなしだ。トレーニング自体はシンプルなので、すぐに真似できる。ぜひ日々のトレーニングに活用していただければと思う。
【講師】対馬 武志/
大学時代に、東京都保谷市(現西東京市)の碧山サッカークラブにて指導者としてのキャリアを開始。筑波大学大学院に在籍していた2004年、なでしこジャパンのアメリカ遠征に「テクニカルスタッフ(分析担当)」として帯同する。その時の縁がきっかけで、2005年に湘南ベルマーレにアシスタントコーチ(分析担当)として入団。その後、サガン鳥栖のテクニカルコーチ(分析担当)を経て、2008年よりサガン鳥栖のアカデミー(U-15)にて指導。その後も福岡J・アンクラス(当時、なでしこチャレンジリーグ所属)、アルビレックス新潟(U-12監督)、松本山雅FC(U-12監督)、星槎国際湘南女子サッカー部(コーチ)と、様々な年代や男子・女子での指導を経験したのち、2023年より愛知県額田郡幸田町にて活動しているGO FORWARD愛知にて小中学生の指導にあたる。
また現在は、これまでの経験を生かし、2023年10月より『サッカー指導者向けのコンサルタント事業』も行っている。
COACH UNITED ACADEMYでは、前回より、U-12のコーチを務める、高橋慎一氏による「駆け引きをしながら、相手の逆をとる実践トレーニング」を公開中だ。
後編では、グループとして相手を観ながら、複数の選択肢を持ち、相手の逆をとってゴールに向かうトレーニングを行っていく。(文・鈴木智之)
後編最初のトレーニングは「2対2+サーバー」。攻撃側はゴールを目指し、守備側はボールを奪い、サーバーの背後にあるライン突破を目指す。
攻守は1回ずつで交代。サーバーがゴールを決めるのはOKで、サーバーは1回のみ使用可能というルールだ。
高橋コーチは「常にゴールを目指す」「どういうサポートをする?」と声をかけ、攻撃側がボールを持ったときに、もうひとりの味方があえて離れることで、局面で1対1の状況を作り出し、突破からゴールを目指す形があることに言及。
もしくは味方が背後のスペースに抜けるアクションを起こすことで、パスもあると見せかけて、カットインしてゴールに迫るなど、状況に応じたプレーの使い分けや、複数の選択肢を持つことの重要性を伝えていく。
目的はゴールなので、ファーストタッチでゴールを目指すところに置くことが理想だ。
高橋コーチは「ゴールを観て、次に何を観る?」と問いかけ、「相手の位置を観て、カットインや裏のスペースへのパス、クロスオーバーの動きなどを使って、どう相手をはがすか。アイデアを出しながらやろう」とアドバイスしていた。
続いては「4対4+サーバー+GK」。設定は同じだが、グリッドが縦34m×横30mと広くなる。
ここでも「相手をよく観ること」「複数の選択肢を持ちながら、より良いプレーを選ぶこと」を強調。
「テンポよくボールは動いているけど、ドリブルの選択肢を増やしてほしい」と声をかけ、「ボールを持った選手は、近いところの選択肢を探している。自分でゴールを目指す選択肢を持とう」と、ゴールを目指すことの重要性を伝えていた。
また、ボールを奪ったあと、サーバーへのパスコースがあったのに、サイドにパスをした選手に対して「どこを目指す?」と声をかけ、「サーバーを観ていない選手が多い。前を向いたらサーバーを覗こう」とアドバイス。
「目的は突破することなので、常に前への意識を持ちながら、ボールを動かしていこう。前を覗きながら、無理だったら止める」など、選択肢を持つ中でプレーを選ぶようにうながしていった。
最後は「5対5+フリーマン+2GK」。開始前、高橋コーチは「コートが縦に長いので、サポートの縦の距離感を作ることができる。スペースがあると相手を観ることができるし、選択肢を持ちながらプレーができる。要所で逆をとりながら、ゴールに向かうプレーを増やしていこう」と声をかけ、トレーニングがスタートした。
他には、パスが出せてドリブルもできるよう、各選手がスペースを意識しながらポジションをとることの重要性を強調。状況に応じた「近づくサポート、離れるサポート」の使い分けもレクチャーしていった。
さらには守備陣にもアドバイスし、「守備が間延びしているので、前から行くのであれば準備をする。難しければ、下がるときは下がる。だた行くのではなく、状況に応じてプレーを変えよう」と声をかけていく。
それに対し、攻撃側には「相手が前から守備に来ているのであれば、狙いを把握して、裏を取るのか。足元を狙うのか」と投げかけ「それぞれがスペースを作ることで、余裕が生まれる。相手の守り方を観て、ゴールにどうやって向かうか。複数の選択肢を持ちながらプレーしよう」とポイントを伝えていった。
以上でトレーニングは終了。高橋コーチは「今回、紹介したトレーニングを積み重ねることで、選手一人ひとりが相手を観て、どのように決断し、ゴールに向かって行くかを考えてプレーできるようになっていきます」と話した。
今回の動画は、相手を観ること、味方とつながることなど、サッカーに必要な要素が組み込まれたトレーニングだ。ぜひ繰り返し観て、指導のポイントを整理しつつ、日々のトレーニングに活かしていってほしい。
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【講師】高橋慎一/
東京スポーツレクリエーション専門学校で指導者の勉強をしながら南葛SCで指導者としての活動をスタート。卒業後はFCリベレオでU-13,U-15の監督を務めてクラブ史上初の高円宮杯関東大会に出場。現在はWingsでU-12の監督を務め「JFA全日本U-12サッカー選手権大会千葉県大会」を2年連続でベスト4入りを果たす。「選手1人1人の良さを伸ばす事」を重視しWings U-15へ内部昇格や関東のJクラブへ選手を輩出している。
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]]>チームとしては相手の逆をとること、個人の良さを伸ばすことに意識を向けており、選手一人ひとりの個性を伸ばすことを重視している。
そこで今回は相手と駆け引きをし、逆をとるために必要なポイントを、U-12のコーチを務める、高橋慎一氏に実践してもらった。
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駆け引きを上達させる「相手の逆をとる」トレーニング。動画前編では「駆け引きに必要な基本技術の習得」をテーマに、ドリブルや4対2、1対1+サーバーを行っていく。
トレーニング前、高橋コーチは「相手の逆をとるためには、駆け引きをしながら、相手をしっかり見ること。相手の動きを予想することが大切です」と話し、「ボールを受ける位置やボールの置き所、体の向き、目線、足首などを上手に使いながら、ゴールを目指すことがポイントになります」と説明する。
最初のトレーニング「フリードリブル&コントロール」では「選手自身のチャレンジが大切になるので、そのチャレンジを促すよう、コーチングにも気をつけて取り組んでいきます」と、指導をする上での心構えを提示。
設定としては、グリッド内で各自ボールを持ち、自由にドリブルをしていく。高橋コーチは「自分のイメージの中でドリブルをしよう」「相手がいるイメージで、上半身を揺さぶるなど、駆け引きをしてドリブルをしよう」とアドバイス。
続いて「体の向きや目線を意識しながら、逆をとること」を、デモンストレーションを交えながら説明していく。
「スピードは意識しなくていいけど、ボールの置所は意識しよう。相手がいるイメージの中で、ボールをどこに置くか。足首でボールの位置クッと変えられるといい」
その後、「7人がドリブルし、6人が動きながらボールをもらう」というルールにチェンジ。ここでもドリブルの選手は「足首を使いながらボールを触り、相手の逆をとること」の重要性に触れていく。
オフ・ザ・ボールでは、動きながらボールをもらうときに、ただ動くのではなく、「自分から近寄ったり離れたりする事」と、コントロールで相手の逆をとれるようにイメージする事」を重要視。
「体の向きを意識しながら、足首やステップワークで逆を取れるようにしよう」とコーチングを行っていった。
2つ目のトレーニングは、12m四方のグリッドで行う「4対2」。いわゆるロンドのトレーニングだが、パスだけでなく、ドリブル突破を推奨する。
高橋コーチは「ただボールを動かすのではなく、対角線上へのドリブル突破を意識してほしい。前提はボールを大切にし、失わないこと。フリーになったら、自分から仕掛けよう」と声をかけていた。
ここでは、ボールを受けたときの体の向きや、目線でフェイントをかけながら、相手が食いついてきたらパスorドリブルなど、複数の選択肢を持つことの重要性を強調。
周囲との関わりの中で、相手と駆け引きをすることに意識を向けていった。
前編最後のトレーニングは「1対1+サーバー」。15m四方のグリッドで実施し、攻撃側はゴールを目指し、守備側は奪ったボールをサーバーへパスすると攻守交代となる。
ここで高橋コーチが強調したのが「(目的である)ゴールを目指してボールをコントロールすること」。
「受けたボールを、ゴールを狙える位置に置く。そのコントロールを意識しよう。ゴールを目指すために、そのトラップを大事にしないといけない」と話し、「守備がゴールを守ろうとしたら、カットインすることもできる。このトラップがすべて。ゴールを意識しながらプレーしよう」と伝えると、次々に良いプレーが出始めていた。
高橋コーチは「前編では、フリードリブルや4対2、1対1で相手との駆け引きや、複数の選択肢を持ちながら、相手を見て決断するトレーニングを行いました」と振り返った。
「最初のフリードリブルでイメージをつけて、4対2では、目的に対してボールを受ける位置を考えることや、積極的なチャレンジに取り組みました。1対1ではコントロールで相手をはがすことや、駆け引きから突破するところがポイントになります」
後編では、グループでのトレーニングに移行し、複数の選択肢を持ちながらゴールに向かうプレーを指導していく。
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【講師】高橋慎一/
東京スポーツレクリエーション専門学校で指導者の勉強をしながら南葛SCで指導者としての活動をスタート。卒業後はFCリベレオでU-13,U-15の監督を務めてクラブ史上初の高円宮杯関東大会に出場。現在はWingsでU-12の監督を務め「JFA全日本U-12サッカー選手権大会千葉県大会」を2年連続でベスト4入りを果たす。「選手1人1人の良さを伸ばす事」を重視しWings U-15へ内部昇格や関東のJクラブへ選手を輩出している。
今年度からジュニアユースの指導に携わっているのが、長年、三菱養和SCで指導し、相馬勇紀選手(カーザ・ピアAC)や、中村敬斗選手(スタッド・ランス)、瀬古樹選手(川崎フロンターレ)など、多くの選手の指導に関わって指導をしてきた大槻邦雄氏だ。
大槻氏は現場の指導に加えて、2023年末には「やってみようサッカー (こどもスポーツ練習Q&A) 」を出版するなど、幅広い角度で選手育成に携わっている。
指導経験豊富な大槻氏による「ジュニアユース年代で抑えておきたい、守備の原理原則」をテーマにしたトレーニング。
後編では「守備の基本を実践する、ゲーム形式のトレーニング」を通じて、個人の判断をベースに、グループでボールを奪いに行くための考え方を身につけていく。(文・鈴木智之)
後編最初のトレーニングは「6対6+GK」。縦60m×横45mのエリアで実施。大槻コーチは「これまでのトレーニング(※前編参照)は、1列の守備だったけど、ここから2列の守備になります」と説明。
前3人、後ろ3人の2列なので、横ズレしながら、縦にズレて守備をする場面が出てくる。
そこで「(前列の選手は)プレスバックまでを考えて守備をしよう」とアドバイス。さらには前編のトレーニングで、味方同士の指示の声が少ないことに触れ、「もっと声を出そう。守備は強い闘争心持ってやらないと失点に直結する」と指摘。
前編同様、ゴールキーパーにもフォーカスし、「ディフェンスラインの背後に抜けてくるボールやクロスボールが入ってくる。ディフェンスラインのコントロールや、ボールに行く・行かないの判断も、後ろからコーチングしてあげよう」と声をかけていく。
実戦形式のトレーニングでは、ゴールキーパーが参加することも多い。指導する際は、フィールドプレーヤーへの指示ばかりになりがちだが、実際の試合ではゴールキーパーとディフェンスラインが協力して、守備をすることが重要になる。
そのため、トレーニングのときから、ゴールキーパーにも気を配るべきだろう。さすが経験豊富な大槻コーチ。ゴールキーパーとの重要性にも言及していた。
トレーニングが始まると、プレーにシンクロしながら、前編で伝えたポイントを端的に伝えていく。
「中を閉じながら」「ポジションをとって」「中を閉じて相手を外に」「間を通されないように」
ここで重視したのが、守備は内側を閉じるポジションをとり、中から外を見られるようにしておくこと。
また、中の選手が早いタイミングで外に出て対応すると、中のスペースが空いてしまう。そのため、いつ、どのタイミングで外に出るかという、認知や判断にもアプローチしていった。
前編では、相手を規制して、サイドに誘導し、予測のもとにボールを奪うことを繰り返し伝えていたが、ゲーム形式でもポイントは同じ。グループでボールの取り所を定めたら、パワーを持って奪いに行くことが重要になる。
さらには、攻撃の前線の選手に対し、自分の横をボールが通過したら、プレスバックして、味方とサンドしてボールを奪うことを強調。その他にも、守備の個人戦術からグループ戦術に発展させていくことについても触れているので、全容は動画で確認してほしい。
最後は「7対7+GK」をジュニア用のコートで実施。ここでは「ファーストディフェンダー役のセンターフォワードの選手を、チーム全体でコントロールしてプレーしよう」と話し、トレーニングがスタート。早速、これまで取り組んできた誘導、規制からボール奪取のシーンが出ていた。
以上でトレーニングは終了。大槻コーチは次のように締めくくった。
「守備には約束事があり、グループ、チームで合わせていく作業が必要です。そして、絶対に守るんだという強い意志、闘争心がなければ成立しません。そのためには、トレーニングの中での声のかけ方、雰囲気作りがとても大切です」
さらに、こう続ける。
「トレーニングメニューはたくさんありますが、まずはサッカーを楽しませてあげることを大切にしています。今回のトレーニングに限らず、指導者が子どもたちと一緒になってサッカーを楽しむ気持ちを大切にしてほしいと思います」
今回の動画は、どのようにして、個人・グループに守備のベースを植え付けるのか。そのための考え方と方法論を知ることができる内容になっている。
ジュニア年代の指導者にも参考になるので、ぜひ繰り返し見て、指導に役立てていただければと思う。
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【講師】大槻邦雄/
1979年4月29日生まれ。
三菱養和サッカークラブジュニアユース、ユースを経て国士舘大学サッカー部でプレー。卒業後、JFLなどでプレーし、選手生活と並行して国士館大学大学院スポーツシステム研究科を修了。
2006年より三菱養和サッカースクールで指導者としてキャリアをスタートさせ、各年代で全国大会を経験。クラブとしての実績を残すとともに、相馬勇紀(カーザ・ピアAC)、中村敬斗(スタッド・ランス)、瀬古樹(川崎フロンターレ)など、述べ20人のJリーガーの指導に携わった。
現在はJリーグ水戸ホーリーホックでアカデミーの指導にあたっている。保護者も含めた多角的なアプローチで選手を育成するスペシャリストとして定評がある。中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)を持つ。
オンラインセミナーでは、Jクラブで20年フィジカルコーチを勤め現在ヴァンフォレー甲府フィットネスダイレクターとしてアカデミー年代のサポートを行う谷真一郎コーチ、日本を代表する選手をはじめプロアスリートからジュニアアスリートまで累計10,000人以上の栄養サポート実績を持つ管理栄養士の佐藤彩香さんに登壇頂き、オンザピッチ・オフザピッチ両面でのコンディション管理において有益なノウハウをご紹介します。
■新学年になると
学年が上がる、特に小学生から中学生、中学生から高校生に上がると強度やスタミナが1段階上がり怪我をしやすいタイミングでもあります。
新学年のスタートからコンディション管理を取り入れ、選手の怪我予防、パフォーマンス向上に繋げませんか?
4月からの新学年を前に、トレーニング構成や休養の取り方・栄養面の両方から学ぶことのできる絶好の機会となっております。ぜひ多くの方の参加をお待ちしております。
■概要
新学年の前に知っておきたい、チームとしてのコンディション管理術
1部:管理栄養士の佐藤さんによる、食事や栄養視点からのコンディション管理
2部:谷さんによるトレーニング構成や休養視点からのコンディション管理
■講師
●谷真一郎(ヴァンフォーレ甲府フィットネスダイレクター)
1968年11月13日生まれ。愛知県立西春高校から筑波大学を経て1991年に柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し1995年までプレー。現役時代のポジションはFW。筑波大学在籍時の1990年に日本代表にも選ばれ同年7月のダイナスティカップ・韓国戦に出場。引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら筑波大学大学院にてコーチ学を専攻。2020年よりヴァンフォーレ甲府のフィットネス関連の活動に携わるフィットネス・ダイレクターに就任。
【指導歴】柏レイソルユースコーチ/柏レイソル フィジカルコーチ/ベガルタ仙台 フィジカルコーチ/横浜FCトップチーム フィジカルコーチ/ヴァンフォーレ甲府 フィジカルコーチ
●佐藤彩香(管理栄養士)
企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。実践型の栄養サポートを行い、プロアスリートからジュニアアスリートなど累計一万人超える人々と関わる。
現在はアスリート栄養サポート、専門学校非常勤講師、セミナー講師、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動。
■開催日時
2024年3月4日(月)20時〜21時30分終了予定
■参加対象
この告知をご覧頂いている皆様
※有料会員以外の方もご参加頂けます。
※指導カテゴリーは問いません。
■参加費
無料
※味の素株式会社が運営するスポーツ栄養科学ラボへの会員登録(無料)が必須となります。 会員登録の流れについては参加お申し込み頂いた後のメールにてご連絡させて頂きます。
■参加お申し込み方法・以下の申し込みフォームよりご応募ください。
【無料オンラインセミナー】ヴァンフォーレ甲府・谷真一郎コーチなどによるチームとし てのコンディション管理術が学べるセミナー>>
・エントリー締め切り後、ZoomのURLをメールでお送りいたします。
■締め切り
2024年2月28日(水)23時59分まで
皆様のご参加をお待ちしております。
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【運営者:株式会社イースリー】
COACH UNITED 事務局
MAIL:info@coachunited.jp
※お問い合わせはメールにて承っております。
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今回のテーマは、低学年のときから意識させたい「パス、ドリブルの使い分けができるボールの持ち方」。講師を務めるのは、神奈川県の強豪・中野島FCのコーチを務める、岡本一輝氏だ。
中野島FCはセレクションがなく、主に小学校の校庭でトレーニングする環境ながら『アイリスオーヤマ 第7回プレミアリーグチャンピオンシップ』で全国優勝を達成。強豪ひしめく神奈川県において、Jクラブに肉薄する成績を残すなど、確かな指導で個とチームを成長に導いている。
U-8~U-10の子たちに対し、プレーの頻度と説明のバランスをりながら、どのような内容を伝えればいいのか。岡本コーチの指導には、サッカーを始めたばかりの子どもたちに対する指導のヒントが詰まっている。(文・鈴木智之)
前回のトレーニングでは、基礎トレーニングの後、2対1を実施した。今回はその発展形として「3対3+1フリーマン」からスタートした。
岡本コーチは「このトレーニングでは、プレーが選べるボールの持ち方、パスの質の他に、相手の立ち位置を見ながら、どのゲートが得点が奪いやすいかを観察することも重要になります」と話し、次のように続ける。
「また、オフザボールの選手の立ち位置や、観る場所にもアプローチしていき、ボールを持ったときに、正しい判断ができるようにコーチングしていきます」
設定としては、グリッド内にコーンで5つのゴールを設置し、ドリブルかパスでラインを通過すれば1点となる。フリーマンは攻撃側の味方で、外にボールが出たら、コーチが配球する。
岡本コーチは「どこが空いているかな?」「空いているゴールを観てた?」など、認知の部分に言及。「観ていないと気づけないよね」「どうやれば観えるかな?」など問いかけながら、考えを引き出していく。
またコーンをめがけてドリブルし、相手が塞いだのを感じて、違うゴールへ目標を変えたプレーを賞賛。「いま判断を変えたよね。こういうのを目指してほしい」など、良いプレーを積極的に褒め、子どもたちのモチベーションを高めていく。
このトレーニングはゴールがたくさんあるので、目的がわかりやすく、プレーの強度も上がる。パス、ドリブルの判断が次々に迫ってくるので、頭の中にも絶えず刺激が入る、秀逸な設定だ。ぜひ参考にしてほしい。
また「ドリブルをすると見せかけて、パスを出すことも意識してみて」と話し、「ボールの持ち方は、周囲を観られるように顔を上げよう。そして、どこに人がいるかを観て、いないところにドリブルしていく」と説明。デモンストレーションを交えることで、子どもたちにも理解しやすくなっていた。
続いてのトレーニングは「3対3+1フリーマン(3ゴール)」。
ゴールを3つずつ設置し、中央のコーンにパス、もしくは両サイドのゴールをドリブルで通過したら1点。フリーマンは攻撃側の味方で、ゴールを決めることはできないというルールだ。
岡本コーチは「中央のゲートに関しては、ゴールというより、あそこのスペースにパスを出したらチャンスになるというイメージ」と、実際の試合を例に伝えていく。
ここでも認知に重点的にアプローチし、「ボールを受ける前に周りを観ていた?」と問いかける。
「試合ではボールだけ? どこを観ないといけない?」と投げかけ「自分が目指す方向が、どうなっているかを観ておこう」とアドバイス。
その後、ボールとゴールの両方を観ることのできる体の向きを作ることをレクチャーしていった。
ほかに、技術的な部分にもフォーカスし、「スピードを上げすぎてボールと体が離れると、判断を変えられない。コントロールできるスピード、ボールの位置が重要」と話し、「判断を変えられるところにボールを置こう」と声をかけていった。
トレーニングの成果として、ボールが来る前に周りを観て、空いている味方にパスをするといったプレーや、パスと見せかけて相手を釣り出し、ドリブルで突破するといったプレーが出始めていた。
トレーニング終了後、岡本コーチは次のように総括した。
「パスとドリブルの使い分けをするためには、観る(認知)、状況判断、ボールの置き所の3つが重要です。観る(認知)は、いつ、どこをどのように観るのかを、細かく選手たちに伝えていくことで、観察力が身についていきます」
さらに、こう続ける。
「状況判断は、状況に応じた正しいプレーを選択し、それが正確に実行できているかを観察していきます。ボールの置きどころは、常にプレーが選べるところにボールを置くことで、多数のプレーを瞬時に選択することができます」
以上のポイントを意識することで、コーチングをするときに、伝えやすくなるだろう。
また、低学年の子どもたちは、お手本を観ることで、プレーを記憶していく。説明と実技の使い分けなど、岡本コーチの指導は参考になるところが多数ある。繰り返し見て、エッセンスを感じ取っていただければと思う。
【講師】岡本一輝/
1996年1月28日生まれ。日本サッカー協会公認B級ライセンス保持。中野島FC、川崎フロンターレU-15、川崎フロンターレU-18、桐蔭横浜大学、Angkor Tiger FC(カンボジアプロ1部リーグ)でプレーし、2019年から中野島FCの監督に就任し指導者としてのキャリアをスタート。2022年夏に行われた「アイリスオーヤマ第7回プレミアリーグチャンピオンシップ」でクラブ初となる全国大会優勝を達成した。
今年度からジュニアユースの指導に携わっているのが、長年、三菱養和SCで指導し、相馬勇紀選手(カーザ・ピアAC)や、中村敬斗選手(スタッド・ランス)、瀬古樹選手(川崎フロンターレ)など、多くの選手の指導に関わってきた大槻邦雄氏だ。
大槻氏は現場の指導に加えて、2023年末には「やってみようサッカー (こどもスポーツ練習Q&A) 」を出版するなど、幅広い角度で選手育成に携わっている。
今回は指導経験豊富な大槻氏に、11人制サッカーの入り口の年代となるU-13の選手たちに、ポジショニングやマークの受け渡しなど、守備の基本をどのようにして指導をしていくのかを紹介してもらった。
トレーニングを通じて守備の原理原則をわかりやすく伝え、選手が向上していく様子をお届けしたい。(文・鈴木智之)
トレーニングのテーマは「ジュニアユース年代で抑えておきたい守備の原理原則」。大槻コーチは「グループ・チームで意図的にボールを奪うことをテーマとして、トレーニングを紹介していきます」と話し、指導に入っていった。
ウォーミングアップを経て、最初のトレーニングは「2対2」。10m×8m+8mのグリッドで、ハンドパスを使った2対2を実施。攻撃側はライン突破、守備側はボール奪取、もしくはボールホルダーを両手でタッチしたら勝ちとなる。
大槻コーチは「ポイントは、ボールを持っている選手に対して、ファーストDFを決めること。さらには、ボールを持っていない選手がどこにポジションをとるのか。パスが出た後に寄せることができて、背後をとられないポジションをとろう」と説明。
ここで強調したのが「規制→誘導→予測」の流れだ。
まず、ファーストDFはボールホールダーに近寄り、相手の動きを規制する。そして、味方の選手へパスを出させるように誘導。そうすることで、守備側のもうひとりの選手は「こちらにパスが来そうだ」という予測が立つ。
そこで、ボールの移動中に素早く寄せることで、奪うチャンスを作り出すことができる。
大槻コーチは「規制→誘導→予測ができるように、ファーストDFを徹底しよう」と話し、「守備はボールの移動中に寄せること。相手にチャレンジ可能かつ、背後をとられないポジションをとり、ボールの移動中に寄せる」と一連の流れを提示していった。
ほかにも「ボールと相手を同一に見ることのできる体の向きを作ること」の重要性をデモンストレーション。大槻コーチの説明により、選手たちのプレーが変わり始める。
2つ目のトレーニングは「2対2+サーバー」。グリッド内にサーバーを追加し、サーバーへパスが入り、3人目の動きでボールを受ければ攻撃側の勝ち。守備はボールを奪えば勝ちとなる(グリッドの設定は1つ前のトレーニングと同じ)。
大槻コーチは「サーバーへのパスコースを閉じて、外へ追い出すイメージを持とう」と説明し、「ボールの移動中に寄せること」「サーバーにパスが入ったらプレスバックして、すぐに戻るところまでがワンセット」とレクチャーしていった。
続いては「3対3+2サーバー」。縦15m×横22mのグリッドで実施。左右にゲートを設置し、そこをドリブルで通過するか、中央のサーバーへパスを入れれば勝ちとなる。
ここでも、ひとつ前のトレーニングと同じように、守備側の選手は、まず中(サーバーへのパスコース)を閉じて、ボールを外に誘導していくことがポイントになる。
大槻コーチは「どういうコーチングができる?」と投げかけ、「サイドでボールが取れるように、仲間同士で声をかけあおう」とアドバイス。
また、攻撃側のサイドの選手が高い位置をとったときに、ボールウォッチャーになると、マークすべき選手が見えなくなってしまう。
そこで「ボールと相手を同時に見ることのできる体の向きを作る」と説明した後、マークの受け渡し方もレクチャーしていった。
動画終盤では、GKコーチのピョン テフィ氏によるトレーニングも収録。実際の試合では、DFはGKと協力してゴールを守ることが重要だ。
そこで、最終ラインの裏に出たボールに対して、GKが前に出てキャッチする「フロントダイビング」や、スルーパスからの1対1の対応など、実戦に近い形のトレーニングを行っていった。
ぜひ、こちらの映像もチェックしてほしい。普段、GKトレーニングに触れることのないコーチにとって、参考になること間違いなしだ。
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【講師】大槻邦雄/
1979年4月29日生まれ。
三菱養和サッカークラブジュニアユース、ユースを経て国士舘大学サッカー部でプレー。卒業後、JFLなどでプレーし、選手生活と並行して国士館大学大学院スポーツシステム研究科を修了。
2006年より三菱養和サッカースクールで指導者としてキャリアをスタートさせ、各年代で全国大会を経験。クラブとしての実績を残すとともに、相馬勇紀(カーザ・ピアAC)、中村敬斗(スタッド・ランス)、瀬古樹(川崎フロンターレ)など、述べ20人のJリーガーの指導に携わった。
現在はJリーグ水戸ホーリーホックでアカデミーの指導にあたっている。保護者も含めた多角的なアプローチで選手を育成するスペシャリストとして定評がある。中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)を持つ。
クラブとして「ボールを大切にしながら、主導権を握るサッカー」を目指しており、個の成長をチームの結果に結びつけている。
COACH UNITED ACADEMYでは、U-12でコーチを務める奥村情氏による「狭い局面でもボールを奪われないトレーニング」を公開中だ。
後編のテーマは「相手の矢印を利用して、局面を打開する実践トレーニング」。
『全日本U-12サッカー選手権大会』で大活躍した、田中綸太郎選手や山田魁慈選手なども出演しており、全国2位に輝いた選手たちのトレーニング様子にも注目してほしい。(文・鈴木智之)
後編最初のトレーニングは「3対3+2サーバー」。15m×15mのグリッドのサイドにサーバーを1人ずつ置き、3対3のボールポゼッションを実施する。ルールとして、サーバーからサーバーへのパスはなし。タッチ制限はないが、サーバーは2タッチを意識してプレーする。
奥村コーチは前編でのトレーニングに触れ「さっきは何を意識した?」「どこを観るかが大事」と声をかけていく。
そして「相手の矢印がどこへ来ているかを感じて逆を取る。上手い選手はボールだけでなく、守備の選手を間接視野で見る。相手との距離を観て、間合いを利用して、その距離の中で駆け引きを入れる」とデモンストレーション。
さらには「自分の進みたい方向に対して、どういうボールの止め方をするのか」をレクチャー。「相手がここに立っているから、ギャップを狙いに行く。背負ってボールを受けないようにしよう」などのポイントを伝えているので、詳細は動画で確認してほしい。
ほかにも「パスの出し方と受け方」について「味方の進行方向を考えて、右と左、どちらの足にボールをつけるか」と話し、守備側のプレスをはがすために「攻撃側が進みたい方向に、守備は制限をかけに来るので、そこを外す」と説明。ボールを奪いに来る相手の矢印とは違う方向に止めることを意識しよう」とアドバイスしていた。
ほかにも「局面でどうやって3対2を作るか」など、相手と駆け引きをして、グループで有利な状況を作ることにもアプローチしているので、全容は動画で確認してほしい。
続いては「5対5+2GK」を行い、実戦に近づけていく。縦30m×横25mのグリッドで実施。
奥村コーチは「実戦に近い形だけど、グリッドがかなり狭い。狭い局面でもボールを失わないように、ファーストタッチとツータッチ目にこだわりを持ってやろう」と声をかけ、プレーがスタートした。
ここで強調したのが、パスの受け方。「攻めたい方向に対して、守備は守らなければいけないポジションがある」と話し、サイドに開いてボールを受けて、相手を外に出させておいて、中へ入っていく動きや、後方からのボールを、懐を作って下がりながらボールを受けて反転するプレーをレクチャー。
このあたりも、前編のトレーニングから繋がっている部分だ。
奥村コーチは相手がボールを取りに来るポイントを意識して、取られないところへ運ぶプレーをデモンストレーション。
「相手の矢印が強く出ているときほど、相手の逆をとりやすい。モーションが大きければ大きいほど、相手のポイントも大きくなる」
最後は8対8のゲーム形式で締めくくり。「狭い局面で相手の間合いを観ながら、駆け引きを入れていこう」と話し、強度の高いゲームが繰り広げられた。
以上でトレーニングは終了。奥村コーチは次のように振り返った。
「後編では、攻撃方向を作り、狭い局面を打開するトレーニングを行いました。このトレーニングは、攻撃方向を利用し、守備側の選手がどの場所へボールを奪いに来ているのか、どこを守りたいのかを攻撃側が把握しながらコントロールできるよう、コーチングすることが大切です」
「今回紹介したトレーニングは、守備側選手の矢印を利用しながら、ボールを奪われないプレーのスキルアップを狙いとし、パスコントロールと、狭い局面でのポゼッショントレーニングを実施することで、相手を観る力と駆け引きの上達が期待できます」
今回のCOACH UNITED ACADEMY動画は、2023年末の全日本U-12選手権大会で準優勝した、FCアロンザのトレーニングを観ることのできる貴重な映像になっている。ぜひ動画を見て、指導内容を参考にしていただければと思う。
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【講師】奥村情/
ジュニア年代からユース年代までJ下部組織で選手としてサッカーを学び、駒澤大学サッカー部を経て、JFLリーグのMi-oびわこ滋賀(現レイラック滋賀)などでプレー。2016年に設立されたFC ALONZA(愛知県)で指導者としてのキャリアをスタート。2023年の「第47回 全日本U-12サッカー選手権大会」全国大会準優勝に貢献。
今回のテーマは、低学年のときから意識させたい「パス、ドリブルの使い分けができるボールの持ち方」。講師を務めるのは、神奈川県の強豪・中野島FCのコーチを務める、岡本一輝氏だ。
中野島FCはセレクションがなく、主に小学校の校庭でトレーニングする環境ながら『アイリスオーヤマ 第7回プレミアリーグチャンピオンシップ』で全国優勝を達成。強豪ひしめく神奈川県において、Jクラブに肉薄する成績を残すなど、確かな指導で個とチームを成長に導いている。
川崎フロンターレのアカデミーで育ち、三笘薫や板倉滉、三好康児といった、プロ選手とともにプレーした岡本コーチによる、判断をともなう技術発揮を向上させるトレーニングは必見だ。(文・鈴木智之)
最初の動画のテーマは「プレーを選ぶ為のボールの持ち方と観る力」。低学年の子は、勢いに任せてスピードを上げ、他の子とぶつかってしまう、あるいはボールを失ってしまうことが起こりがちだ。
そこで「ボールを運びながら、周囲を観てスペースを認知する」「パス、ドリブルの両方ができる位置にボールを置く」といったことをキーファクターに指導していく。
最初のトレーニングは「基礎トレ(4方向パス&ムーブメント)」。4色のコーンを2ペア(計8個)用意し、円を描くように配置する。選手はコーンの前にボールとともに立ち、同じ色のコーンへドリブルする(往復)。
岡本コーチは「前の人は抜いていっていいけどぶつからないでね。できるだけ早くやろう」と声をかけて、トレーニングがスタートした。
設定上、子ども同士が入り乱れるので、ぶつからないように周りを見ることがポイントだ。ここで岡本コーチは「なんでぶつかっちゃった?」と質問をしながら「顔を上げていなかった」という答えを導いていく。
そこで「ボールだけを見ているとぶつかっちゃうから、目指すところを見て運ぼう」とデモンストレーション。問いかけと実演をバランスよく入れ、子どもたちの集中を切らさないように進めていく。
さらには、前に相手がいる状態でかわすことができず、ぶつかってしまった場面を抽出。
「周りを観て、相手がいることはわかっていたけど、体とボールが離れてしまっていたので、避けられずにぶつかってしまったよね。ボールはプレーを選べるところに置こう」と、デモンストレーションを交えて説明していった。
次にコーンの色ごとにボールを1つにし、4人でパスorドリブルを使ってボールを動かしていく。
岡本コーチは「スペースをみつけて、プレーを選べるところにボールを置けているかな」と声をかけていく。
ここでは、他のチームの人にボールをぶつけてしまった場面に注目。
「パスをすると決めると、ボールしか見なくなってしまう。人が来たのに気づかなくて、ぶつてけしまったよね。周りを観ながらボールを運んで、パスをしようとしたときに、人が来たら止めて、ドリブルでパスコースを作ろう」
岡本コーチのわかりやすい説明により、子どもたちのプレーが向上していく。続いて、パスの出し方にも言及。
「パスをする相手は味方だよ。チームなので、プレーしやすいパスを出してあげよう。近くにいる味方に強いパスを出すとコントロールが大変。でも味方が遠くにいるときはゆっくりだと届かないので、強いパスを出そう」
最後はパス15本つなぐというルールにして、競争形式にし、飽きっぽい子どもたちの集中力を保たせていった。
2つ目のトレーニング。テーマは「 プレーが選べるボールの持ち方と状況判断」。「2対1(ライン突破)」を通じて、状況を観て判断し、ドリブルとパスを使い分けることについてアプローチしていく。
設定としては1対1+1フリーマンの形で、攻撃側がコーチからのパスを受けてスタート。フリーマンがいるので、実質2対1の状況でコンビネーションを使う、あるいはフリーマンをおとりに使いながらドリブルで突破を目指す。
守備側はボールを奪ったら、攻撃側の背後にあるコーン間をドリブルで突破する(守備側もフリーマンを使って良い)。
岡本コーチは「できるだけ時間をかけずに突破するよ。実際の試合だと、相手が戻ってきてしまうからね」と話し、「フリーマンは相手の位置を観て、パスコースを作る動きをすること」や「足元に出すパスとスペースに出すパスの使い分け」にも言及。
低学年にもわかりやすい内容で「なぜそうしたほうがいいのか?」を説明していく。
中野島FCの子どもたちからは、上の学年になるにつれて、高いサッカー理解をベースにプレーする様子が伝わってくるが、それも今回のトレーニングのように、コーチがしっかりとサッカーに対する考え方を提示しているからだろう。
動画では岡本コーチによる、理論的かつわかりやすいコーチングが余すことなく収録されている。低学年にもわかりやすいように伝える内容、雰囲気作りも含めて、参考になること間違いなしだ。
【講師】岡本一輝/
1996年1月28日生まれ。日本サッカー協会公認B級ライセンス保持。中野島FC、川崎フロンターレU-15、川崎フロンターレU-18、桐蔭横浜大学、Angkor Tiger FC(カンボジアプロ1部リーグ)でプレーし、2019年から中野島FCの監督に就任し指導者としてのキャリアをスタート。2022年夏に行われた「アイリスオーヤマ第7回プレミアリーグチャンピオンシップ」でクラブ初となる全国大会優勝を達成した。
2022年度の大会でベスト4に進んだアッズーロ(滋賀)が、今年度も出場を果たした。今大会は前年ベスト4のうち、3チームが都道府県大会で敗退しており、唯一の2年連続出場となった。(取材・文:鈴木智之/写真:渡邉健雄)
(グループE 第2節。アッズーロ(黄色)vs サガン鳥栖(白))
アッズーロはグループリーグで浦和レッズ、サガン鳥栖というJクラブに加え、準優勝することになるFCアロンザ(愛知)と同組。ハイレベルな相手としのぎを削りながら、3敗で大会を後にした。
「COACH UNITED ACADEMY」にも出場経験のある、古荘隆徳監督はサガン鳥栖戦(0-3)後、「うちらしさが、あまり出せなかったです」と語った。
(サガン鳥栖後にインタビューを受ける柴原監督)
「駆け引きや判断の部分で、観ている人におもしろいと思ってもらえるサッカーを目指しているのですが、今回はあまり出せなかったですね。縦に縦にっていうのはあったので、もうちょっと緩やかなとこからギュッと縦に入ったり、ドリブルを見せながらパスを入れたりとか、変化をつけた攻撃がしたかったです」
攻撃面で気を吐いたのが、サイド突破でチャンスを作った、7番の大原礼暉選手とキャプテンで10番をつける重野大智選手。
古荘監督は「うちのストロングポイントは両サイドのスピード」と話すとおり、大原選手のドリブルは鋭い切れ味を見せていた。
(アッズーロの7番、大原礼暉選手)
「彼はもともと中の選手だったんですけど、全国で戦うにはサイドの武器が必要だと思ったので、夏にコンバートしました」
古荘監督には、COACH UNITED ACADEMYで「1対1とパスを併用して、目の前のDFを攻略するトレーニング」を実施してもらったが、この試合に関しては「7番は体の向きを意識しながら、ドリブルで持ち上がるプレーが随所に出ていました。10番も相手の重心をずらして、逆をつくプレーは出せていたのかなと思います」と成果を口にした。
(アッズーロの10番、重野大智選手)
普段から「ボールを持った時の判断を重視して、指導にあたっている」と話す、古荘監督。COACH UNITED ACADEMYのトレーニングでも「相手の重心を揺さぶるためには、どういう手段がある?」「相手を観察して、どうやって騙す?」などの声をかけていた。
今大会、得点こそなかったが、Jクラブ相手に通用する場面もあり、日頃のトレーニングの積み重ねを感じさせた。
一方で反省として「例年はゴールキーパーからビルドアップしながら攻めて行くのですが、今回は前に早く蹴ることが多かった。突破力のある選手に、安定してボールが配球できなかった」と悔やんだ。
古荘監督は明確な指導方針のもと、正確な技術の習得や判断など、サッカーに必要な要素を丁寧に指導している。次大会での巻き返しが楽しみだ。